目的別に分けるか、統合するかが課題

 以上のように目的によってBOMの内容は異なるが、元は同じ製品を表現するものであるため、互いに整合性が取れていなければならない。目的別で独立して運用すると相互に食い違いが生じやすくなり、かといって統合するとそれぞれの目的に対しては使いにくくなることが、長年にわたる課題になっている。

 特に、設計者が作成したEBOMは、生産部門が作成するMBOMの元であるにもかかわらず前述のような差異があり、EBOMを基にMBOMを作成する際にそれを補う作業が煩雑である()。自動処理で変換することも、両者を統合することも難しい。市販のPDMツールの中には、変換も統合もせずに、EBOMとMBOMの間で要素同士の対応関係を管理できるものがあり、一方に変更があった場合、他方に反映しやすくなる。

図●BOMの親子関係
図●BOMの親子関係
製品-ユニット-部品といった階層関係を親子関係で表現することが多い。
[画像のクリックで拡大表示]

 同じ製品をグローバルに分散した拠点で造る場合にも問題が生じる。拠点ごとに最適な調達を実施すると、同等品であっても異なったサプライヤーから納入を受ける場合が出てくる。トレーサビリティーを確保するためには、同等品であっても拠点ごとに異なる番号を付けて区別する必要があり、その集まりとしてのBOMも拠点ごとに区別することになる。しかし、拠点ごとにBOMを区別すると、製品の生産を工場間で移管したり、工場間で部品や資材を融通したりしたいときに適用しにくい。この場合、拠点によらず、BOMを同一と見なす必要があるからだ。

 これらの問題を解決するためには、企業ごとにBOMに含まれる情報が何のためにあるかを精査し、何をいつ区別して、いつ同一と扱いたいかを決める必要がある。例えば、東南アジアに十数カ所の工場を持つフォスター電機の場合、同等品であっても少しでも区別する必要があれば、BOM上では全く別のものとして管理し、BOMの外に同等品であるという情報を保持している。さらに、同等製品のBOMの親子関係の構造は、生産拠点の違いにかかわらず共通にしている。これを別々にすると、別工場への生産移管や、部品や資材の融通が難しくなってしまうからだ。EBOMとMBOMの間でも、親子関係は共通にしている。