当コラムでは2回前の「iPhone 5cに圧勝した『土豪ゴールド』」で、中国でも廉価版として米Apple社が出したスマートフォン「iPhone 5c」(以下、同5c)の販売が低迷しているようだということを書いた。その後も、中国や台湾では同5cの不調を伝える情報が相次いでいる。

 中でも注目されたのは、EMS(電子機器受託生産)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、同5cの生産を打ち切り、Apple社が同5cと同時に発売を始め品薄状態が続いている旗艦モデル「iPhone 5s」(以下、同5s)の生産に注力するというものだ。

 こうした情報は大半が市場関係者や金融機関のアナリストによるものだったが、業界の関心を集めたのは、台湾の経済紙『工商時報』(2013年11月16日付)の報道。同社のiPhone主力工場である中国河南省の鄭州工場で同5cの生産ラインで働いているというワーカーだという人物が同月中旬、ネットに書き込んだ内容を紹介したものだ。「昨夜の生産台数はたったの200台だった」「ラインリーダーは我々に、同5cとの最後の時間を大切にするよう呼びかけた」「もう工場の中で同5cを見ることはできない。今後また見たくなったら外で買うしかない」などとして、同工場での生産が間もなく終了することを示唆。さらにこの人物は、鄭州工場において同5cが「49」、同5sが「5X」というコードネームで呼ばれているとした上で、「私たちのラインは間もなくコードネーム5Xの生産を始める」と披露。これらの情報は全て、ラインリーダーから聞いたものだとしている。

 工商時報は同月26日付でも、Appleウオッチャーとして著名な台湾KGI証券のアナリスト、郭明錤氏が最新レポートで、同5cの2013年第4四半期出荷台数を、従来予測から35%下方修正し724万台にとどまるとの見方を示したと紹介した。郭氏は、年末商戦など最盛期を迎える第4四半期においても、同5cの販売が大きく改善することはないと予測。出荷台数が2013年第3四半期から11%減少するほか、旧モデル「iPhons 5」「iPhone 4S」の合計934万台をも下回るとの見方を示した。