2013年3月期の連結決算で5期ぶりの最終黒字化を果たすなど、業績が好転したマツダ。今後の高収益化の布石と位置付けているのが「モノ造り改革」であり、その柱である「一括企画」だ。一括企画とは、2015年までに発売する8車種をまとめて企画し、その実現に必要な標準モジュール(≒SKYACTIV TECHNOLOGY)を確立した上で、全車種に展開するというものである。

 この一括企画に基づいた新型車の開発は、従来のプロセスとどう異なるのか。一括企画の第3弾となる新型「アクセラ」の開発担当者を務めた同社商品本部主査の猿渡健一郎氏に聞いた。

――新型アクセラは、一括企画の車種としては第3弾になります。一括企画というモジュール的な手法によって、何が変わったのでしょうか。

新型「アクセラ」の開発責任者を務めたマツダ商品本部主査の猿渡健一郎氏

猿渡氏:まず言えるのは、今回のアクセラが造り始めてから16カ月で出来上がったことです。非常に短いですよね。デザインなどでさまざまな苦労はありましたが、SKYACTIVの技術がしっかりしているため、ある意味でハードを大きく変更する必要はありませんでした。従来は、プラットフォームや部品を流用するにしても、ハードの開発や調整にものすごく時間がかかっていました。そこが一括企画の成果として最も現れているところです。

――この16カ月とは、具体的にいうと…。

猿渡氏:モックアップを実際に削り始めてから、(量産準備に向けて)工場に移管するまでです。

――16カ月でフルモデルチェンジというのは過去に例があるのでしょうか。

猿渡氏:ありません。

――相当に短い。

猿渡氏:異様に短い、といってもいいかもしれません。

――ハードを変更する必要がなかったというのは、どういう意味でしょうか。

猿渡氏:ハードはほぼ完璧な状態で出来上がっていました。それがどういうことか、パワートレーンの例で説明しましょう。今回、排気量が1.5Lのガソリンエンジン、それからハイブリッド(同2.0Lのガソリンエンジンと、トヨタ自動車の技術供与を受けたハイブリッド・システムの組み合わせ)の仕様を新たに設定しました。当然ながら、それらを新たに開発するための工数は必要です。しかし、通常なら最も時間を要する燃焼特性について、マツダは既に「理想形」を確立しています。

 従って、理想形の燃焼特性をベースに、ある意味ではコピペ(コピー・アンド・ペースト)で新たな仕様を実現するわけです。こうした(ベースとしての共通モジュールをさまざまな車種に展開していく)ノウハウもこれまで(一括企画の第1弾の「CX-5」や第2弾の「アテンザ」)の開発を通じて見えていたので、新しいパワートレーンの仕様を開発するのにそれほど時間はかかりませんでした。