開始から1年半を費やした本連載も、今回をもって最終回としたい。“もの・ことづくり”と設計力強化を改めて考察しながらまとめとしたい。

日本の製造業が目指すべき方向、“もの・ことづくり”について

 本連載の第2回第3回で、日本が目指すべき方向は“もの・ことづくり”であると書いた。これに対して、日本モジュラーデザイン研究会の日野三十四氏から「“こと”や“ことづくり”が分かりにくいので、これらをきちんと定義すべき」とのご指摘を頂いた。この問題については、同研究会として議論した内容をメディオクリタス(本社東京)の方がきれいにまとめたものがあるので、参照いただきたい〔『顧客価値創造のためのモジュラーデザイン』(2013JMDI講演資料、2013年10月20日)〕

 ただ、筆者が述べてきた“こと”は、上記の議論からさらに外側のビジネスモデルを中核としてきたので、2つの例を使って改めて説明しておきたい。

 まず、最初の例であるが、筆者が“ことづくり”を言い出したのは2003~2007年に横断型基幹科学技術研究団体「開発・設計プロセス工学調査研究会」委員を委嘱された際のことである。同研究会の『コトつくり長野宣言』にヒントを得て、産業界に“モノづくり”から“コト創り”へのパラダイムシフトを提言したものがある〔坂井佐千穂、「創造型開発設計プロセスに向けたデジタルエンジニアリング」, 『精密工学会誌』Vol.72(12), pp.1457-1460 (2006)〕。そのときに使った図を少し書き加えて、図1として下記に示す。

図1●“ものづくり”、“ことづくり”、“もの・ことづくり”
図1●“ものづくり”、“ことづくり”、“もの・ことづくり”
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