今回は、常石造船においてグローバル生産に貢献する3D工程設計と作業指示の実際を見ていきたい。同社は3D-CADで船舶を設計した後、XVLで組立工程を定義し、それをレビューしている。具体的には[1]生産計画の全体像を3Dアニメーションで提示、[2]詳細工程を3Dで検討し、アニメーションで伝達、[3]現場視点でレビューして設計にフィードバック、といった3点の取り組みを実施している。

 同社は日本国内に本社工場を含め二つの工場を持ち、さらにフィリピンのセブ島、中国の秀山に海外工場がある。同社の主力商品はタンカー、ばら積貨物船、自動車運搬船、木材チップ船といった大型船であり、中には全長が300m 近いものがある(図1)。

図1●常石造船の主力商品
図1●常石造船の主力商品
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 造船事業の特徴は、受注後に設計を開始してから引渡しまで2年半から4年半もの長い期間をかけることである(図2)。造船に必要な部品の数は数十万点にも及び、しかも全長300mの大型船であっても、製造にはミリ単位の精度が要求される。大規模な3Dのデジタルモデルを活用して、設計や工程を早期に検証していくことは極めて重要になる。

図2●造船における受注から引き渡しまでのプロセス
図2●造船における受注から引き渡しまでのプロセス
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常石造船
ツネイシホールディングスの子会社として広島県福山市に本社を構える。ツネイシホールディングスは国内外十数社からなるグローバルカンパニーで、造船事業や海運事業、環境エネルギー・サービス事業の3事業を中心に展開している。このうち造船事業を担うのが常石造船である。