『日経ものづくり』2013年11月号特集2では、米国の環境評価ツール「EPEAT」についてUL Japanの追谷武寿氏に解説していただきました(Tech-On!にも掲載)。EPEATとは何か、一言で説明するのはなかなか難しいのですが、誤解を恐れずにいえば、「グリーン購入法」の米国版となりますでしょうか。ただし、その中身や適用対象製品はかなり違います。追谷氏には、このEPEATが日本の製造業にどのような影響を及ぼすのかについてまとめていただきました。

 パソコン(PC)やPC用モニタに携わっている方には、EPEATはよく知られているでしょう。EPEATは2006年にPCやPC用モニタの環境評価ツールとして米国で制定されました。そして、米大統領令によって「政府調達の95%以上はEPEAT適合品でなければならない」と定められたのです。これによって、政府調達や公共の入札案件に関係する製品では、EPEATへの適合はほぼ必須となりました。現在では、オーストラリア/カナダ/ニュージーランド/英国/フランス/ポーランド/シンガポールなどでも、何らかの形でEPEATの要求事項を採用・参照しています。2013年には、中国でもEPEATと同様の環境評価ツールについて導入を検討するという発表がありました。

 EPEATの影響力を表すエピソードがあります。実は、米Apple社が2012年6月末にEPEATからの離脱を宣言し、それまでの適合認定を取り下げたのです。その理由については明確にされていませんが、EPEATには製品の分解性などに関する評価項目があり、それがApple社の設計方針と合っていなかったことから、離脱に踏み切ったという見方があります。ところが、Apple社はその2週間後に「EPEATからの離脱は過ちだった」として、EPEATの適合認定を受け直したのです。

 そのEPEATの適用対象製品は、どんどん拡大しています。2012年12月には新たに映像情報機器(複合機やプリンタなど)とテレビが適合対象製品に加わりました。それを受けて、キヤノンやリコー、コニカミノルタといった日本の映像情報機器が2013年になってEPEATの最高ランクである「ゴールド」への適合を果たしています。将来的には、携帯電話機や業務用サーバへの適用も予定されています。

 筆者がキヤノンやリコー、コニカミノルタに取材して分かったのは、最終製品メーカーだけではなく部品や材料のメーカーにもEPEATの対応が求められるということです。具体的には、低消費電力化や植物由来樹脂の活用といった評価項目で基準を満たすために、最終製品メーカーと部材メーカーの協力が不可欠です。EPEAT対応は全社的な活動となるため負荷も大きいのですが、最終製品メーカーにとっても部材メーカーにとっても差異化のチャンスといえます。