アフリカでの鉱物採集の様子(写真:PTCジャパン)
アフリカでの鉱物採集の様子(写真:PTCジャパン)
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 こうした状況への対応策として、「ドッド・フランク法(金融規制改革法)」として知られる法案が米国議会で成立し、その第1502条で製造企業は自社製品に含有するAu、Ta、Sn、Wの産地を調査し、紛争で疲弊するDRCおよびその周辺地域からの採鉱物か否かを特定することを義務付けました。同法により、米証券取引所に上場する企業は紛争鉱物の使用に関する情報を、2014年5月31日を最初の年次公開期限として提出しなければなりません。その後も定期的に報告が義務付けられています。

材料を変える必要性も

 紛争鉱物への取り組みは実は、報告義務への対処にとどまりません。将来的な調達リスクをはらんでいるのです。言うまでもなく、Taはコンデンサに、Snははんだなど、エレクトロニクス機器に欠かせない材料です。さらに、「ドッド・フランク法の対象となる鉱物は今後も追加される可能性はある」(PTCジャパンの担当者)のです。

 「Co(コバルト)が5番目になるかもしれない」――。一部ではこう不安視されています。Coがドッド・フランク法の対象になると大変です。DRCはCoの一大産地で、世界の半分ほどを担っているとされます。同法の対象になれば、材料価格の高騰は免れません。

 一歩踏み込むと、Coを使わない製品/部品開発が求められるようになる可能性も十分にあります。こうなると、例えばCoを正極材料に多く用いていたLiイオン2次電池は別の材料へのシフトが急務になります。

 紛争鉱物やドッド・フランク法は、調達部門や企業の社会的責任(CSR)の担当者にとってはよく知られている話題ですが、「研究開発部門に方々には情報が浸透していない」(PTCの担当者)とのこと。

 気になったので、開催中の「第43回東京モーターショー2013」の会場で聞いてみました。ある電池技術者に水を向けると、「Coの動向は気にしている。できれば使いたくない」といった言葉が返ってきました。アンテナを張っている技術者はいました。いずれにしても、紛争鉱物はどうやら対岸の火事ではなさそうです。リスクの高い材料は何なのか。きちんと調べてみたいと思います。

■変更履歴
掲載当初、「ドット・フランク法」と記述されていた箇所がありましたが、正しくは「ドッド・フランク法」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/11/22]