2012年、日本の電子産業は総崩れの様相となった。

 パナソニック、ソニー、シャープの同年3月期の最終赤字額は、3社合計で約1兆6000億円に達する。さらに半導体では、エルピーダメモリもルネサス エレクトロニクスも2012年初頭に経営危機に陥る。エルピーダは会社更正法適用を申請、米Micron Technology社に買収された。ルネサスは産業革新機構や自動車会社などによる救済計画が決まる。

国内生産は2000年をピークに急激に衰退

図1 日本電子産業の生産金額推移
資料:経済産業省機械統計
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 だが日本の電子産業の凋落は2012年に始まったわけではない。日本電子産業の国内生産金額は2000年に約26兆円である。ここをピークとし、2012年には12兆円と半分以下に落ち込んでいる(図1)。10年で半減というペースで国内生産は衰退した。

 このような日本の電子産業全体の激しい衰退の原因として、個々の日本企業の経営の失敗、それはあったろう。経営者の責任もあったに違いない。しかしそれだけでは、日本の電子産業の「総崩れ」を説明できない。日本のエレクトロニクス関連企業に共通する失敗があったか。あったとしたら、それは何か。

 それを考える前に、日本の電子産業の衰退という現象を分解して、はっきりさせたい。

 第1は過去との比較である。かつては盛んだったのに、最近になって衰退した。この現象については連載第1回の本稿で考える。

 第2は世界の他地域との比較である。米国の、韓国の、あるいは台湾の電子情報通信産業は元気なのに、なぜ日本の電子情報通信産業は元気がないのか。

 第3は他産業との比較である。特に自動車産業との比較がしばしば話題となる。日本の自動車産業は元気なのに、なぜ日本の電子産業は元気がないのか。

 本連載「電子立国は、なぜ凋落したか」では、この三つの問いのそれぞれに何らかの答を出すべく、考えを進めたい。