日本の電子産業の転換点は、むしろ1985年

 1990年代初頭にバブル経済が崩壊してから、日本経済は長く低迷する。21世紀に入ってからも「失われた20年」を超え、低迷は続く。その起点は通常は1990年である。

図2 日本電子産業の生産・輸出・輸入・内需・貿易収支の推移
資料:経済産業省機械統計,財務省貿易統計
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 しかし日本の電子産業の転換点は、むしろ1985年である。1985年以前と以後では、日本の電子産業は構造が違う。この事実を示しているのが図2である。図2は1970年以後の日本電子産業の、「生産」「輸出」「輸入」「内需(生産+輸入-輸出)」「貿易収支(輸出-輸入)」を図示したものである。

 1985年以前と以後で一番違っているのは、貿易収支の動向だ。それまで勢いよく伸びていた貿易黒字が、1985年以後には減少に転じる。1985年には9兆円の貿易黒字を達成して外貨の稼ぎ頭だった電子産業、その日本の電子産業の貿易収支は、2012年には黒字を保ったとはいえ、黒字額はわずか5000億円である。そして2013年の1~6月には、2000億円の赤字を記録するに至る。

 1985年以前には、日本の電子製品の第1の輸出先は米国だった。米国は日本の電子製品を冷戦政策に活用する。米国の冷戦政策は1985年に終わる。1985年から始まる急激な円高は、日本の民生用電子機器(テレビや家庭用VTRなど)の輸出を壊滅させた(次回に詳述)。米国の冷戦政策のもと、「輸出で外貨を稼ぐ」を行動指針とした時代、そういう一つの時代は1985年に終わった。