先日、元パナソニック副社長 元三洋電機副社長の古池進氏と「日本のものづくり」をテーマにお話する機会がありました。デジタル家電全盛期にパナソニックの半導体部門トップなどを務めた古池氏が強調していた昨今の注目トピックの1つが巨大EMS(電子機器受託生産サービス)企業の台頭でした。

 台湾Hon Hai Precision Industry社(通称Foxconn)をはじめとするグローバル規模で成長を続けるEMS企業の拠点規模は、「日本企業の7~12倍に達している。徹底的に規模を追うことで、日本の電機メーカーなどにはない大規模なものづくりノウハウを確立した。そして、短期に投資を回収し、多くの顧客確保による投資・在庫リスクの分散を進めているところに賢さがある」(古池氏)と分析します。

 古池氏によれば、EMS企業が台頭した大きな理由の1つが「製品のデジタル化が進んだ『デジタル時代』に即した工場の在り方を追求していること」(同氏)にあります。同氏の見方では、「台湾などのEMS企業では、商品群ごとに工場の立地を集約し、地域内での相互生産を視野に入れながら規模を確保している。加えて、商品群別のプラットフォームを構築して技術やノウハウを共有しつつ、それらを資産化できている」(古池氏)。この背景には、部品やソフトの標準化が進んだデジタル製品の存在があるのです。

 これに対して、日本の電機メーカーなどのマザー工場は、「商品ごとに拠点が点在し、生産規模が小さい。そのため、商品群に共通した技術・ノウハウの資産化が困難。こうした工場展開はアナログ時代には有効に機能したが、デジタル時代には合っていない」(古池氏)と見ています。

 製品のデジタル化とともに台頭するEMS企業。古池氏は、「EMS台頭の裏には欧米のしたたかな戦略が見え隠れする」と分析します。「欧米企業が技術の国際標準化を主導し、世界中で同じモノが造られる経済環境を整備した」というのが古池氏の見立てです。「デジタル製品の時間競争の中で、どこでも生産できる体制の構築を狙い、欧米企業がEMSを育成してきたのだろう。参入障壁を下げ、スピード勝負の経済環境をつくりだし、EMSによって日本メーカーの付加価値の奪取を図ったのではないだろうか。一方、欧米企業はコア技術のブラックボックス化とライセンス料で付加価値を堅持した」(古池氏)というわけです。

 古池氏は、デジタル時代のものづくりの反省として、「デジタル時代を捉えた欧米企業のしたたかな戦略とこれに連動したEMSのグローバルなものづくりの枠組みを日本企業は軽視し、競争力を喪失した。一方、EMSによるものづくりは今日的な合理性があり、学ぶ点は多い」(同氏)との見方を示します。

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