オーエム産業は、岡山市にある創業70年目を迎えるめっき会社です。会社は老舗、でも、同社を経営する社長の難波圭太郎氏はエネルギッシュな若手です。ワケあって具体的な年齢は明かしませんが(タイトルをお読みいただければ分かります…ね)、「社長としては若手、記者としては中堅」とだけお伝えしておきましょう(笑)。私が難波社長(私はいつもこうお呼びしています)に初めてお会いしたのは、今から8年前のことでした。

 きっかけは、「生産革新(カイゼン)を推進できる工場経営者を育てる」ことを目的とした、ある研修を密着取材したことにありました。同研修は、ソニーやキヤノンの工場を変革したことで知られるムダとりコンサルタントの山田日登志氏が提供しているものです。

 研修の参加者は、幾つかのグループに分かれて活動を進めます。さまざまな分野の工場に入り、その場でムダとりを実践して「ムダを見抜く目」を養っていくのです。難波社長は、私が張り付いて取材することになったグループのメンバーの1人でした。

 このグループのメンバーが、どの方も非常に個性的でして…。研修は月に1回、1泊2日のスケジュールで半年にわたって実施されます。期間中は日本各地の工場を転々とするわけですが、常にメンバーの頭にあるのは「どうやったら早く宿泊先近くの飲み屋さんに行けるか」にあったようでした(笑)。

 こうして全員で思いを共有していた(?)ことが功を奏し、グループは驚異的な集中力で次々とムダとりの課題をこなしていきました。自社で経理を担当している中堅メーカーの総務部長はカイゼン効果を計算(夜は飲み屋さんでの割り勘を計算)し、プロジェクト管理が得意な大手メーカー・グループ会社の取締役は作業の割り振りを担当(夜は飲み屋さんを手配)し、プレゼンテーションが得意な中小企業の部長は進んで発表役を買って出る(夜は食べ物や飲み物の注文を取りまとめる)。

 難波社長はそんな中、他のメンバーに比べて突出して若かったこともあり、グループの弟的な存在でした。飲み屋さんでお兄さまたちから「○○を買ってこい」などと“ムチャぶり”をされることもありました。でも、難波社長は嫌な顔ひとつせず、「若いモンが先輩の言うこと聞くのは当たり前」とばかりに勢いよく買い物に出かけ、皆の期待以上の物をきちんと購入して帰ってくるのです。

 私は、難波社長のそんな姿を見るたびに、「やっぱり会社、そして社員たちの命運を預かる人の懐は大きい。私も同い年なんだから、もっとがんばらなくちゃ」と思ったものでした。

 当時の私は経営誌に所属。直接、難波社長が経営するオーエム産業を取材したことはなく、同社がどのような技術を持っているかの詳細は知りませんでした。その後、『日経ものづくり』に転属になり、同社の技術を思う存分、取材させていただく機会を得ました。その記事をTech-On!で読めますので、興味のある方はご参照ください。

 なお、オーエム産業は、2013年11月20(水)~21日(木)に東京都立産業貿易センターで開催される「ものづくりパートナーフォーラム2013」に出展します。こちらも興味のある方はご来場いただければと思います。

 ちなみにムチャぶりをしたお兄さまたちは、難波社長が買い物に出掛けている間、こんな話をしていました。「アイツ、本当にスゴい奴だよな。本当は俺たちよりずっと偉い『社長』なのにさ…」。