本コラム2013年10月24日付け記事「米国が“特許の怪物”を牽制する判決」の後編である。判決が示したロイヤルティ算定の基準をハイテク分野の特許動向に詳しい植木正雄氏(スターパテント)が詳説する。この算定根拠を読み説くと、米国における特許裁判の損害賠償基準は大きく変わった、と言える。(Tech-On!編集)

 「Innovatio社へ支払われるべき同社のIEEE802.11標準必須特許19件のRANDロイヤルティ料率は、メーカー5社が米国で使用または販売するWi-Fiチップ1個当たり9.56米セント(0.0956米ドル)とする」

 これが米イリノイ州Innovatio裁判の判決主旨であった。判決主旨の「メーカー5社」とは、Wi-Fi無線通信機能を搭載した製品を製造、販売している米Cisco Systems社、米Motorola Solutions社、米SonicWALL社、米Netgear社、米Hewlett-Packard社の大手製造企業5社を指す。料率は原告の要求の100分の1のオーダーであり、判決はパテント・トロール(特許の怪物)の活動を抑え込む米政府の政策に通じる。

 判決の詳細な意義については、本連載の2013年10月24日付け記事「米国が“特許の怪物”を牽制する判決」で紹介した。本稿はその後編として、ロイヤルティ算定基準を抑え込む上記判決を導いた料率の算定手順を説明する。この算定方法には、今後の特許政策の意図が反映している。