技術以外を見れば「ことづくり」に

 トップ交渉でレーベルを説得し今まで楽曲の権利者が拒んできた楽曲配信に道を付けるという環境開発を実現し、対応ソフトの「iTunes」を「Windows」にも対応させることで多くのユーザーを取り込む環境も創り上げました。また社名から「コンピュータ」という言葉を外しApple社のブランドをコンピュータ以外の分野に拡大する新たなファン層を掘り起こすマーケティング戦略で認知開発にも成功したのです。この結果、iPodはビジネス的に大成功しました。それだけでなく、「iPhone」や「iPad」という現在Apple社の事業を牽引する製品群を生み出すきっかけとなったのです。

 このように技術開発フェーズ以外のフェーズをうまく開発し、ビジネス全体をデザインすることがこれからのビジネスに重要であることが分かると思います。このことが「技術」という「ものづくり」の一側面だけに集中するのではなく、人びとの営みをうまく取り入れる「ことづくり」という新しいビジネスの形に繋がってきます。

 「技術開発フェーズ」は「ものづくり」にとても親和性が高い一方、「問題開発フェーズ」と「環境開発フェーズ」、「認知開発フェーズ」は「ことづくり」に親和性が高く、これらのフェーズに着目することがこれからの「ことづくり」の可能性を引き出してくれると考えられるからです。