検索をビジネスの視点で見てみれば

 このGoogle社のビジネスを技術という側面で考えてしまうと、検索技術の優秀さに目がいってしまいますが、同社のビジネスの凄さは検索技術だけではありませんし、同社は検索技術を売っているわけではありません。検索技術をビジネスのベースの一つにしていますが、そのビジネスはインターネット上の広告代理店なのです。

 これを4つの開発フェーズに当てはめてみるとその違いがよく理解できます。Google社は、問題開発フェーズでは今までに人びとが利用していなかった検索という概念を導入することで、新たな問題を開発しました。技術開発フェーズで同社は他を寄せ付けない高度な検索技術を開発し提供しています。

 環境開発フェーズを考えると、インターネットの普及やパソコンの高機能化、従来の携帯電話機やスマートフォンの普及が同社に好都合な環境を提供しています。それだけではなく、検索に人びとを誘導するためにOS(基本ソフト)の「Android」をスマートフォンのメーカーに無料で提供することでさらなる環境開発を行っています。最後に認知開発フェーズですが、様々な広告やPRなどのマーケティングを有効に利用していることは述べるまでもないでしょう。

 Google社は全てのフェーズで検索エンジンをベースにしたビジネス開発を行っています。これに対して日本の産官学の検索エンジン開発は技術開発フェーズだけに集中した結果、新しいビジネスを生み出すことはできなかったのです。「よいものは売れる」という技術信仰一辺倒の発想がうまくいかなかった好例と言えるでしょう。