再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の適用を受けたメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、全国各地で稼働を始めている。だが、かつて自治体主導で設置が進んだ風力発電設備に比べ、地元の盛り上がりはいまひとつだ。「メガソーラーは地元にとって利点は少ない」との見方が一般化している。そうしたなか、広島県は自ら発電事業に乗り出して売電収入を県内に還元する計画を進める。東北復興プロジェクトでは、新電力と組んでメガソーラーの電力を地元の農業に使って、地域活性化を狙う動きも出てきた。

 「新規雇用は生まないのですよね」――。

 メガソーラー事業を運営する大手エンジニアリング会社のある幹部は、地元自治体との事前協議で、自治体関係者から発せられた“あきらめ”ともいえるこの言葉が頭から離れないという。

 このメガソーラーは、工場を誘致するために自治体が造成した工業団地の一角に建設した。土地を所有する大手メーカーは製造拠点の海外移転を進めており、国内での新工場建設は、当面予定がない。そこで、未利用地の有効活用としてメガソーラー事業者に土地を貸したという経緯がある。

新規雇用は「草取り」ぐらい

 自治体から見れば、大手企業の工場を誘致することで、数百、数千人規模の雇用が生まれることを期待していただけに、FITの買い取り期間である20年間、工場用地が太陽光パネルで覆われてしまうことへの落胆は大きい。

 実際にメガソーラーは完成してしまうと日常的には無人で稼働し、新規雇用をほとんど生まない。メガソーラーの発電状況を監視し、異常があった場合、不具合の箇所を特定して、適切に対処することは非常に重要だ。しかし、監視はリモートで東京などの本社で行い、現場での緊急対応は元々ある地元の支店や契約した地元企業が対応する。

 こうした緊急対応のため、支店や地元企業が保守要員を増員することはほとんどない。定期的に発生する発電サイトで人手の要る作業は、太陽光パネルに影のかかる背丈の高い雑草を除去するぐらいで、これさえも頻繁になって人件費がかさむようだと、除草剤の散布や除草シートを敷くなどで対応する発電事業者が増えそうだ。

 地元にほとんど新規雇用を生まないという点では、風力発電設備も同じだが、普及の草創期に自治体は大型風車を積極的にアピールした。2000年前後から自治体が設置を進めた風力発電設備の場合、自治体は売電収入を得るとともに、巨大な風車を再生可能エネルギーのシンボルと位置付けた。

図1 英国にある展望台付きの風力発電設備
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 現在、主流の1000kW以上の風車の場合、発電機を載せたポールの高さは60mを超える。遠くからの視認性もよく、ブレード(羽根)が回転しているために目を引く。2000年代初めに大型風車がまだ珍しかった頃、自治体によっては風車目当ての視察や観光客で年間5万人以上が訪れるなど、集客効果も大きかった。この傾向は、欧州にも当てはまり、英国などには展望台付きの風車が設置されている(図1)。