現場が見たい3D情報を追求

 作業指示書では、担当者が何をすべきか素早く分かる図、特に現場作業者が見たい場所を見たい方向から見た図であることが重要である。自動処理でXVLから図を生成することもできるが、本当に見やすい図は、作業を知る現場作業者あるいは生産技術の担当者が作成するのが一番だ。そこで、このシステムでは、一番見たいであろう方向を人が指示・登録しておき、その向きからの見え方を画像データにして表示している。

 画像データは、XVLデータから簡単に作成できる。もちろん、XVLを直接表示することも可能だが、画像データにしておくと閲覧時に工程を順送り表示しても適度なスピードを維持しやすい点でメリットがある。さらに画像データは、標準のWebブラウザがあれば閲覧できるという長所があり、つまりさまざまなプラットフォームを表示装置として使えることになる。XVLからの画像に加えて、別に作成した画像や写真などを組み合わせて使うことも容易であり、そのような仕組みも用意した。

 部品の形状は、部品番号や関連情報と対応付けて表示する必要がある。従来は部品形状に風船番号(丸数字)を付けて、部品番号や関連情報との対応を表現していたが、ここは互いに対応する要素を同じ色にして表現する方法に改めた。現場の意見を突き詰めていくと、図と属性情報の対応がすぐに分かればよいのであって、対応付けに番号を使わなくても問題はないという評価であったという。画面構成は現場が必要な情報を手軽に追加できるように工夫。部品の関連情報を簡単な指示ですぐに取り出せるようにした。こうした工夫の積み重ねが現場に受け入れられる基盤となった。

 図4には現場での作業指示書の利用イメージを示す。それぞれの担当の仕事内容により、PC上で参照して仕事を進める人もいれば、紙に出力するケースもある。さらに、現場にiPadを持ち出し、指示書を確認したり、iPadのコメント作成ソフトを利用して指示書に書き込みをしたりといった運用も始まっている(図5)。前述のように、作業指示書の図は画像であるため、iPadでそのまま閲覧可能である。

図4●現場での作業指示書参照例
図4●現場での作業指示書参照例
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図5●iPadを利用した指示書の参照例
図5●iPadを利用した指示書の参照例
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 iPadの画面共有機能を利用して、PC上で稼働するXVLStudioの画面を現場で見ることもできる。図6のように、iPad上でも詳細な確認が可能であり、現場での検討の際に設計者と共に現物と3Dモデルを比較できる。

図6●iPad上で画面を共有して現場で議論
図6●iPad上で画面を共有して現場で議論
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推進部門が知らないうちに利用が拡大

 このような、工程情報とXVLが連携した仕組みを提供すると、現場独自の“2次利用”も始まる。図7は、推進部門も知らないうちに、3D情報の2 次活用が始まった例である。現場へ部品を搬入する際の情報は、以前は部品番号だけで管理していたため、番号に精通するベテラン社員以外には分かりにくいものだった。そこで、番号に対応する部品形状のイメージを工程DBから取り出し、印刷結果を白板に張り出すことにしたのである。

図7●現場での“2次利用”の例
図7●現場での“2次利用”の例
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