汎用的な論理を学習

 これまで紹介してきた通り、新市場創造につながったイノベーション事例を分析すると、ほぼ必ずといっていいほど、このような組織戦略を採用していることが分かります。もちろん、米国の事例のように事業を担う組織の物理的な距離を遠ざけることは、手法の1つにすぎません。大切なのは、既存の主力事業の影響下から新事業の取り組みを切り離すことです。

 当時の経営者が、二刀流組織の合理性をどの程度認識・意図していたのかは分かりません。経営者による合理的な判断というよりは、現場経験の蓄積から導かれた取り組みだった可能性もあるでしょう。

 しかし、そのことは問題ではありません。重要なのは、当時の経営者の認識・意図ではなく、現実に起きた組織メカニズムの背後にある汎用的な論理を明らかにし、学習することだからです。それができれば、後世に生きる我々は、二刀流組織の考え方をこれからも意図して使えるようになります。

 「価値次元や製品戦略の転換を阻む」というすり合わせの副作用を抑え、日本のイノベーション力を一層高めるカギの1つは、二刀流組織の本質を理解した上で、組織の状況に合わせて意識的に調整し、自社への導入を図るという二刀流組織のマネジメントにあると考えられます。