Tech-On!のテーマサイト「家電・PC」で、この1カ月に多くのアクセスがあった記事のランキングは右のようになりました。

 4位の「変わらないApple、変わり続ける市場」は、『日経エレクトロニクス』のAppleウオッチャー、今井デスクによるApple論。新型「iPhone」を軸に、市場が変わっても同じ姿勢でものづくりを続けるApple社の次なる矢を分析しています。

 例えば、なぜ腕時計型に代表される「ウエアラブル(身につけられる)機器」が同社からなかなか出てこないのか。内容は同記事に譲りますが、一筋縄ではいかない“ある理由”を考察しています。

変わらない研究所

 変わらない研究所もあります。ランキングの第2位に入った人気コラム「華麗なる技術者」の「なぜ、ソニーCSLは創造的であり続けられるのか」で紹介した、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)。「越境し、行動する研究所(At Beyond Borders)」をモットーに掲げ、25年間変わらぬ姿勢で研究を進めています。

 もちろん、研究テーマは時代に合わせて変化してきましたが、「ソニーの事業につなげよう」がテーマ選びの前提ではない点が特徴的です。企業の研究所としては、異彩を放っています。

 同研究所所長の北野宏明氏は「研究者に論文を書くことは求めていない」と言い切ります。「むしろ、中途半端な論文は書いて欲しくない」し、ソニーの既存事業のために研究するのでもない。

 「本質的なこと、革新的なことを研究して欲しい。そして、ボーダーを越えて自ら社会を変えるまで実行するのが研究者」という一貫した変わらぬ姿勢が底流にあります。将来に向けた研究は、ソニーの枠を超えていることが前提だというわけです。そして、研究者が自らの手で技術による社会の変革を具現化すべきだと。

 コラム著者の米Intellectual Ventues 日本総代表の加藤幹之氏は、「(ソニーCSL)が異彩な存在に見えてしまう日本の研究風土の方が課題を抱えているのではないか」と問題提起しています。「選択と集中」の名の下にリスクが大きい研究に投資できない方向に変わってしまった企業研究所や研究機関の現状は、本当にイノベーションにつながるのかということでしょう。個人に目を転じれば、自由な研究環境を得たければ、研究者は腹をくくれということなのかもしれません。