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エディターズ・ノート

「薬事法」という“巨大な敵”を知る

  • 小谷 卓也=日経エレクトロニクス 兼 デジタルヘルスOnline
  • 2013/11/06 05:00
  • 1/1ページ

 「特に困難だとは感じなかった」
 「そんな面倒くさいことが必要なら、やめようかと思った」

 これは、2013年10月30~31日に福島県で開催された医療機器設計・製造展示会&最新技術セミナー「メディカルクリエーションふくしま2013」で実施された「新規参入に向けたパネルディスカッション」での一コマです。議論の対象は「薬事法」。医療機器分野への新規参入を目指す企業にとっての“障壁”とされる薬事法について、実際に新規参入を果たした企業などがそれぞれの経験談を語っていました。

 この議論や他の多くの企業の体験談を耳にして思うのは、薬事法がどの程度の障壁なのかは、企業によってさまざまだということです。どんな機器の許認可を得たいのか、どのような業態の業許可を得たいのか、あるいはその企業の規模や体制がどのようなものか、などによって実際に必要な労力や、その労力を大変と感じるかどうかなどには大きな差があるわけです。ですから、同じ薬事法についての話でも、冒頭のような二つの対照的なコメントが出てくるのです。

 この薬事法に今、新たな動きが出てきています。現在召集中の第185臨時国会において、2013年5月に閣議決定した、いわゆる「改正薬事法案」が審議されているのです。この改正案の目玉となる重要なポイントは、これまで同一の条項で扱われてきた「医薬品」と「医療機器」を別々の章で規定するようにしたことです。現在の薬事法は主に医薬品を想定して策定されたものであるため、医療機器開発の実態に沿っていないとされていました。その課題解決を図ろうというわけです。

 そして、医薬品と分離される医療機器の章における注目点としては、主に次の三つが挙げられます。すなわち、(1)製造業を許可制から登録制にする、(2)民間の第三者認証機関を活用した認証制度の対象範囲を拡大する/QMS(quality management system)調査を合理化する、(3)ソフトウエア(単体プログラム)を医療機器の範囲に加える、です(詳細は日経エレクトロニクス2013年8月19日号の解説記事「『薬事法』の改正がエレ業界にもたらすもの」参照)。

 このうち(1)と(2)は、大まかに言えば、いわゆる薬事法の許認可のハードルを下げるものと言えます。新規参入を目指すエレクトロニクス関連企業などにとっては好都合の改正と言えるでしょう。

 一方、(3)は、これまで扱いが明確になっていなかった単体のソフトウエアについて規定しようとするものです。例えば、スマートフォン向けの医療用アプリケーション・ソフトウエアなど、新たな概念の医療関連機器の位置付けにも関わってくる改正です。

 この改正については現在、さまざまな議論が巻き起こっています。「これまでグレーゾーン(扱いが不明瞭)だったものが明確になるのだから、二の足を踏んでいた企業も参入しやすくなる」「規制の対象にするという話である以上、運用を一歩間違えると単なる規制強化になってしまう」など、多様な声が聞こえてきます。

 もっとも、この改正の具体的な中身については、「ソフトウエアを医療機器の範囲に加える」という以上のことは、現時点ではあまり固まっていません。実際、ソフトウエアと一口に言っても多様なものが存在するわけで、このうちどのようなソフトウエアを医療機器の範囲とし、あるいは範囲外とするのか。また、それらをどう運用していくのか。まさに、これから決まっていく段階なのです。

 この改正薬事法は、現在の臨時国会で可決されれば、公布から1年以内に施行となります。その時、新規参入企業にとって薬事法が実際にどの程度の障壁になるのかは、前述の通り企業によってさまざまであることに変わりないでしょう。

 むしろ、新規参入企業にとっての薬事法の最大の障壁は、「知らない」ことではないでしょうか。新規参入企業にとって、これまで無関係だった薬事法を知らないことは当然です。知らないがゆえに、まるで“巨大な敵”と戦うような漠然とした不安にさいなまれている企業は少なくないはずです。前述の改正動向などを含め、まずは「知る」ことが、新規参入への第一歩となることは間違いありません。

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