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中国経済は寓話で読み解く(2)、なぜ「外資を儲けすぎ」と考えるか

2013/11/11 00:00
永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
今回紹介する書籍
書名:王二的経済学故事
著者:郭凱
出版社:浙江人民出版社
出版時期:2012年7月

 今月ご紹介している1冊は、『王二的経済学故事(王二の経済学物語)』。王二という架空の人物にまつわる寓話を題材に現在の中国における政治や経済の問題を読み解いた評論集である。

 今回は本書から「経済政策の誤解と真相」と題された第6章を取り上げる。この章では「加工貿易と貿易黒字」「自力更生と重商主義」「外資導入」「日和見主義と政府の信用」「衆愚政治の危険性」「「知的財産権」「人口問題」と多岐にわたる問題が論じられている。

 その中で筆者が特に興味深く感じたのは「外資導入」「衆愚政治の危険性」そして「知的財産権」に関する分析である。2013年3月に本コラムの記事「中国の中学生は近現代史をこう習っている」でも指摘したように、中国人には漠然と「自分たちは諸外国に不当に虐げられた歴史がある。(だから、今、世界は自分たちの無理をある程度聞くべきだ)」という感覚があるように思えるのだが、ではその傾向に警鐘を鳴らしている。

 「外資導入」の項では以下のような寓話を用いている。

 王二は広大な荒れ地を所有していた。この土地は、地質こそいいのだが、至る所に石や枯れ木が散乱しており、雑草が生い茂り、起伏が激しかった。その上、水源から遠く、農業をするためには遠くから水を引いてこなければならなかったので、いい田になる要素はあったものの、莫大な先行投資が必要なので誰も手をつけようとはしなかった。

 しかし、あるとき他の土地から人が来て、王二にこう言った。「機械を買う金を出すから、この土地を開墾してくれれば、毎年上がる収益の半分を渡そう」。王二は大変悩んだが、このままにしておけばこの土地は収益を全く生み出さない。この話に乗れば収益の半分を渡さなければならないが、それでも自分の手元に残る利益があるなら今よりはずっといい。

 こう考えた王二はこの話を受けることにした。するとすぐに必要な機械や車が届き、2カ月もしないうちに土地は見事に開墾され、水路も整備された。そして翌年には田植えが行われ、秋には十分な収穫が上がった。王二は約束を守り、金を出してくれた人に半分の収穫を渡した。このようにしても、王二の得た収穫は大きく、その後も彼の収入は年々増えていき、瞬く間に財をなした。しかし、あるとき、王二は「元々自分の土地で自分が農業しているのにどうして半分を他人に渡しているのだろうか」と思うようになった。

 本書ではこの王二の考え方を現在の中国における外資に対する見方と重ねて解説する。もちろん自分の土地ではあるが、最初に出資者が金を出さなければ現在の富は得られなかった。中国も自分たちが力をつけたからといって外資を排斥するのはよくないというのだ。

 中国では外国企業が儲けすぎている、という不満があり、それに対して、本書作者は外国企業も慈善事業をやっているのではない以上、収益を上げられる地となった中国で稼ごうとするのは当然のことだと述べている。このような冷静な分析が中国社会でも多数派となれば、中国の国際社会での見られ方もさらに一歩進むのではないだろうか。