今回紹介する書籍
書名:王二的経済学故事
著者:郭凱
出版社:浙江人民出版社
出版時期:2012年7月

 今月ご紹介する一冊は、『王二的経済学故事(王二の経済学物語)』。米ハーバード大学で博士号を取得した中国人民銀行の経済学者が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの中国語版に書いたコラムをまとめた書籍である。王二という架空の人物にまつわる寓話を題材に現在の中国における政治や経済の問題を読み解いた作品集で、それぞれの寓話も面白く、よくまとまっている。今月は本書を紹介していきたい。

 本書は8章からなっており、それぞれのテーマは以下の通り。

1.格差、所得の再分配
2.税金
3.不動産
4.為替レート
5.通貨政策、インフレ
6.経済政策全般(衆愚政治、知的財産権、人口問題)
7.「中国モデル」と言われる発展のあり方
8.世界の中の中国

 この8項目に現在の中国経済の論点が集中していることの表れであろう。本書の発行は2012年7月。ただ後書きの日付が2011年の10月となっているところを見ると、書かれたコラムはそれ以前のものが多く、現在とは状況の異なる面もあると思われるが、現在から見ても納得できる内容が多い。作者の分析力を物語っている。といって、鋭いばかりではなく、用いられる寓話はそれぞれに面白く、説得力もある。