「ウエアラブル」って本当にモノになるんでしょうか。

 今、電子業界で「次にくる機器」の筆頭と言えば、泣く子も黙る「ウエアラブル」です。あ、泣く子は黙りませんか。失礼しました。Tech-On!の読者の方はご存じでしょうが、念のために申し上げますと、人々が身につけて使う色々な装置のことを、まとめてそう呼んでいます。例えばスマートフォンと連動する時計だったり、腕輪のように手首に巻いて体調を測る装置だったり、あとは何と言っても眼鏡のようなディスプレイで、居ながらにして世界中の情報にアクセスできたりとか、そういうものすべてがウエアラブルなんです。

 先日あった展示会「CEATEC JAPAN 2013」の目玉もウエアラブルだとの前評判がありました。会場で出会った某経済新聞の記者が、デスクからウエアラブルで何か書けとせっつかれて弱っていたほどです。確かにNTTドコモが見せた将来の利用シーンのデモは大人気で、うかつに並んで全く動かない人の列に困り果てたりもしました。それでも、私は今ひとつ盛り上がり切れませんでした。日経エレクトロニクスのCEATEC解説記事のタイトルでも、「スマホの次はウエアラブル」と言い切らずに、デスクの権限で「?」をつけさせてもらいました。

 NTTドコモのデモが、他社の既成品など、どこかで見たようなヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を使っていたからではありません。これまでずっと期待しては裏切られてきたからなのです。ちなみにヘッドマウント・ディスプレイは英語で書くと「head mounted display」と、「ッド」がつくはずなんですが、何で「ヘッドマウント」なのかと申しますと、多分マスコミがそう書いたからではないでしょうか。私が知るかぎり、そう書いたのは私が最初でした。申し訳ございませんでした。

 私が初めて「ウエアラブル」という言葉に触れたのは、今から20余年前、社会人になって1年か2年たった頃です。国内の某大手電機メーカーの研究開発部門の方と話していて、そういうアイデアがあると聞いたと記憶しています。「コンピュータを着ちゃう? なんてブッ飛んだ発想なんだ!!」。大学を出たてで、まだ汚れていなかった自分は、話の内容はさておき、異常に感銘をうけたことを鮮明に覚えています。

 その後、取材でHMDやら、仮想現実感(VR)やら、拡張現実感(AR)やらに関わるようになりました。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったソニーがHMDの試作機を見せたり、松下電工(当時)がVR技術でキッチンの出来上がりを施工前に確認するシステムを実用化したりと、思えばいい時代でした。そして、ウエアラブルの最初の盛り上がりが来たのが1998年です。日本IBMが8月に、ヘッドホン・ステレオ(懐かしい響きですね)大のウエアラブル・パソコンの試作機を発表。10月には、朝日新聞社主催の「ウエアラブル・シンポジウム2010」(2010年といえば未来の象徴だったんですね)で、様々なウエアラブル機器をモチーフにしたファッションショーが開かれました。同月私は、当時第2回目だったウエアラブル・コンピュータの国際シンポジウムに参加するため米国ピッツバーグに飛びます。もちろん、特集記事としてまとめるためです。