「実際には、統計と合っていないところもあるんだけれども…」

 掃除機の国内出荷台数はこの数年、減少傾向にある。日本電機工業会(JEMA)の統計によれば、2013年度の出荷台数見通しは515万台。2010年度に比べて6%減で、約30万台減少した。国内の大手家電メーカーの記者発表会で登場する調査結果は、ほとんどがこれを基にした数字を引用している。ときに冒頭の言葉とともに、である。

海外メーカーの掃除機が国内市場の流行を作り出している。写真はDyson社のサイクロン掃除機。

 「統計と合っていない」。その理由は単純だ。実は、掃除機の国内市場はプラス成長しているという別の調査が存在する。家電量販店などでの販売台数を調べているGfK Japanによれば、2012年の掃除機の販売台数は804万台。2009年に比べて104万台増えた。「白物家電では珍しく、市場規模が伸びている」(同社)。これが販売の現場を捉えた国内の掃除機市場の現状である。

 JEMAの出荷統計と、販売台数の間でズレが生じる大きな要因の一つは、海外メーカーの存在だ。JEMAの出荷統計には、英Dyson社やスウェーデンElectrolux社、米iRobot社などの掃除機の動向が反映されていない。出荷と販売の統計のズレは、日本市場で販売を拡大する海外メーカーと、それに押される国内メーカーという現状を示している。

 日本メーカーの掃除機が、海外勢になかなか追い付けていない製品分野。そのキーワードは「コードレス」である。象徴は、ロボット掃除機だろう。GfK Japanによれば、2012年の販売台数は36万台で、2009年に比べ32万台増えた。iRobot社の「Roomba(ルンバ)」が切り開いたカテゴリだ。

スティック型の掃除機が人気を呼んでいる。写真はElectrolux社の製品。

 もう一つは、スティック型の掃除機である。2012年の販売台数は117万台で、この分野も2009年比で32万台増えている。調査したGfK Japanは、スティック型の市場の伸びを支えているのはDyson社やElectrolux社の製品と指摘している。

 もちろん、ロボット掃除機もスティック型も、国内メーカーは製品を投入している。ただ、いずれの分野も現状の主役は、海外メーカーという点で一致する。そして、二つの製品分野に共通した技術要素が「コードレス」である。つまり、掃除機本体に2次電池を搭載しており、電源コードなしで掃除ができることだ。

 「コードレス」は、掃除機の古くて新しい技術課題である。ユーザー調査をすれば、「電源プラグの差し替え」は面倒な作業として必ずと言っていいほど上位に挙がる項目だ。このコードレス掃除機の分野で海外メーカーに挑戦すべく技術開発を加速させている日本メーカーがある。シャープだ。