「東京でリケジョのためのイベントを開催するけど見にくる?」。ソニーセミコンダクタ(熊本県・菊陽町)白石蔵王テクノロジーセンターに勤める友人がこう誘ってくれたのは、2013年6月のことでした。私が以前、「誌面で女性技術者たちをもっと取り上げたい」と話していたのを覚えていてくれたのです。ところで皆さんは、「リケジョ」という言葉を聞いたことがありますか? リケジョとは、「理系女子」のこと。ソニーは同年8月末、女子中学生を対象にリケジョを育てるためのプログラム「Sony Science Program for Girls」をお茶の水大学のキャンパスで開催しました。そのサポート役を務めたのが、ソニーの女性技術者やソニー・太陽(大分県・日出町)の女性社員たちです。

 同イベントの目的は、子どもたちに工作や実験を通じてものづくりの面白さに気付いてもらうことにあります。当日は、ソニーがWebサイトで呼び掛けて集まった15人の女子中学生が参加しました。テーマは、ソニーお得意の「光通信」。電子オルゴールの信号を光で送る「送信機」と、その光を受信してオルゴールの音をスピーカーで流す「受信機」の両方を工作します。

 ここからは、写真でその様子をご紹介していきます。

会場の風景
会場の風景
メインの講師を務めたのは、ソニー・太陽の男性社員。同社は社員の約60%を障害者が占める会社で、マイクロホンなどの生産を手掛けています。

まずは「お姉さん」がお手本
まずは「お姉さん」がお手本
女子中学生たちは5つのグループに分かれて、各グループを担当する女性技術者/社員の「お姉さん」にやり方を教わります。工作のほとんどが回路基板の作製になるため、はんだごての使い方は重要なポイント。まずはお姉さんがお手本を見せます。

はんだ付けの前に銅板を切っていきます
はんだ付けの前に銅板を切っていきます
回路基板のベースとなるのは、どこにどのような回路を作ればいいかがあらかじめ記入された厚紙。その記入された内容に合わせて部品を実装していきます。最初は、部品間をつなぐ銅板を所定の大きさに切るところから始めました。

切った銅板を厚紙に貼り付けたら、電子部品を仮どめします
切った銅板を厚紙に貼り付けたら、電子部品を仮どめします
切った銅板を厚紙の所定の位置に貼り付けたら、今度は抵抗やコンデンサなどの電子部品を実装していきます。まずはテープで仮どめし、部品を固定します。

いよいよはんだごての出番です
いよいよはんだごての出番です
部品を仮どめしたら、ニッパーを使ってリード線をちょうどよい長さにカット。いよいよはんだごてを使います。何度か練習してから本番に挑戦。あらかじめ銅板の方をはんだごてで温めてから、はんだを溶かして流すのがコツのようです。

お姉さんたちもフル稼働
お姉さんたちもフル稼働
銅板を貼るまでは調子が良かった女子中学生たちも、さすがにはんだごてには悪戦苦闘。サポート役のお姉さんたちもフル稼働でやり方を教えます。

だんだん上手になってきました
だんだん上手になってきました
取り組んでいるのは送信機用の基板。真剣な表情です。はんだごての使い方がだんだんうまくなってきました。

LEDライトがついた!
LEDライトがついた!
送信機と受信機のケースには、食品などをストックするプラスチック容器を使用します。送信機の基板にLEDライトや電子オルゴール(メロディIC)などをつなぎ、受信機にはフォトトランジスタ(光センサ)やスピーカーなどを接続します。つまみをひねったら、ライトが光った! うれしそうな表情。

送信機と受信機を向い合せたらメロディが…
送信機と受信機を向い合せたらメロディが…
送信機のLEDライトを受信機のフォトトランジスタに当てると、「エリーゼのために」のメロディが流れてきました。あちらこちらからメロディが流れて、会場は一気ににぎやかになりました。

鏡で反射させても光信号は届くかな?
鏡で反射させても光信号は届くかな?
送信機と受信機が正常に機能することが確認できたら、いろいろな実験をしてみます。写真は、鏡で反射させても光信号が届くかどうかの実験。その可否は受信機のメロディが鳴るかどうかで判断できます。

イベントは女性技術者にとってもプラスに
イベントは女性技術者にとってもプラスに
サポート役を務めた女性技術者は、イベント後にこう話してくれました。「子どもたちが、楽しそうにものづくりをしている姿を見てうれしくなりました。ソニーのことも知ってくれていた。こんな子どもたちが『身近に置いておきたい』『手放せない』と思ってくれるような製品づくりをしたい」。

 このイベントには、「メーカーの技術系職場に女性をもっと登用したい」というソニーの思いが込められています。イベントに参加した女子中学生のうち、何人が理系に進み、メーカーを就職先として選ぶかは分かりません。でも、こうした企業の地道な活動が、いずれ技術系職場の多様性につながるのではないかと思います。『日経ものづくり』の誌面でも、女性技術者の活躍ぶりをもっと紹介することで、その一端を担えればいいなと考えています。

 ちなみに冒頭でイベントについて教えてくれた友人は当日、“はんだ付けのプロ”としてサポート役に回りました。でも、「みんな、上手にできていたので思ったほど出番がなかった」と、ちょっとさみしそうでした(笑)。