ところで、Apple Sore中国では、ゴールドを中国語で「金色」と表記しているのだが、ネットやメディアではもっぱら「土豪金」と表記している。

 「土豪」とは中国でも日本と同様、各地方で権勢を振るう豪族、権力者のことを指す。さらに最近は、有料のオンラインゲームなどに湯水のように金をつぎ込む若者のことを「土豪」と呼ぶ。多少ニュアンスは異なるが、「成金」のような響きがある。よって「土豪金」は「成り金色」と揶揄しているようにも捉えられるが、必ずしもそれだけではない。

 検索サービスの中国最大手、Baidu社(百度)の運営するネットの百科事典「百度百科」にも既に「土豪金」の項目が登場している。土豪金についてまず、「Appleが2013年9月に発売したスマートフォンiPhone 5sのゴールドカラーのことを指す。中国の、とりわけネット上での呼称」と説明し、ゴールドカラーはApple社が中国市場を意識して出したものだとの分析があると紹介。その上で、土豪金についてのネットでの評価を列挙しているのだが、「土豪金をラインアップに加えたのは、Apple社のティム・クック最高経営責任者(CEO)が就任以来下した決定の中で最高のもの」「中国市場が何を求めているかを分かっている。クックは見る目がある」「クックCEOはスティーブ・ジョブズ前CEOよりも中国市場のことをよく分かっているようだな」と評価する声が多いのである。

「土豪金」ことゴールドカラーのiPhone 5sと店頭で試す客(Apple Store上海淮海路店)
「土豪金」ことゴールドカラーのiPhone 5sと店頭で試す客(Apple Store上海淮海路店)

 5sのゴールドカラーと同様、同5cも、やはりApple社が中国市場を意識して投入した製品だったはず。中国の移動通信キャリア3社の中で唯一、iPhoneを販売していない最大手のCnina Mobile社(中国移動)が2013年末と目されるLTEライセンスの公布を待って取り扱いを始めれば、中国での5c販売が大きく伸びるとの見方も市場や業界にはある。ただ、このまま販売が伸びなければ、「百度百科」の「iPhone 5c」の説明に、「中国市場を理解しないの意」と付け加えられてしまう時が来ないとも限らない。