米Intel社が毎年開催する開発者向けイベント「Intel Developer Forum」(以下、IDF)を取材してきました。Brian Krzanich氏が、2013年5月に同社のCEOに就任してから初めてのIDFでどのような方針を打ち出すのかが注目されていました。

 Tech-On!の速報記事(記事一覧)や日経エレクトロニクス2013年10月14日号の解説記事でまとめたように、今回のIDFの大きなトピックは二つあったと思います。

 二つのトピックとは、(1)22nm世代の「Atom」製品群を相次いで投入したこと、(2)いわゆる「IoT」(internet of things:モノのインターネット)などに向けてAtomよりも消費電力が低いCPUコアを使った「Quark」製品群を発表したこと、です。急速に市場が拡大したスマートフォンやタブレット端末など、Intel社がまだ支配的ではない市場に積極的に取り組む姿勢を明確にしました。その他、14nm世代への微細化が計画通りに進んでおり、14nm世代の技術を適用したマイクロプロセサの量産を2013年内に開始するという説明もありました。

 こうした大きなトピックとは別に、筆者が楽しみにしていた技術セッションがありました。今回のIDFの直前に、Intel社は光通信用コネクタ「MXC」と光通信用ケーブル「ClearCurve LX」を発表しました。Intel社のSiフォトニクス・モジュールで波長1310nmの光を使って通信することを前提に、米Corning社が開発したものです。IDFの「MXC - The Next Generation Optical Connector」と題したセッションでは、主にCorning社がこれらの技術を紹介しました。

 ClearCurve LXは、波長1310nmの光に最適化したもので、接続を容易にするためにコア径を50μmと大きくしています。Intel社のSiフォトニクス・モジュールを使って300mの距離を25Gビット/秒で送受信した場合、信号の減衰を1dB未満に抑えられるとしています。そのとき、エラーなしのデータ伝送を40分以上継続できたそうです。

 またMXCは、複数の光トランシーバに対応する、光ファイバ同士を並列で接触させるコネクタです。最大64本のClearCurve LXを接続して、最大1.6Tビット/秒のデータ送受信が可能です。接触部にホコリなどが存在した場合の影響を小さくするために、接触部にレンズを配置して接触部の径を180μmまで広げています。

動きが激しくなってきたSiフォトニクス

 ここ数年、Siフォトニクス関連の動きが激しくなっています(日経エレクトロニクスの関連記事)。米Cisco Systems社が2012年2月にSiフォトニクス関連のベンチャー企業である米Lightware社を2億7100万米ドルで買収することを発表した他、2013年5月には米Mellanox Technologies社が総額8200万米ドルで米Kotura社を買収することを発表しました。Intel社も、長きにわたりSiフォトニクス技術の実用化に力を入れてきました。

 その一方で、「Siフォトニクスは発光効率が低く、コストが高い。Siフォトニクスの用途は筺体内などの限定的な領域に留まり、筺体間などの長距離用途では現在のVCSELを使う方式が今後も主流になるのではないか」(ある部品メーカー)との見方もあります。中国のメーカーの進出により、VCSELを使う光通信モジュールが低価格化していることが背景にあるようです。

 Intel社はClearCurve LXやMXCの適用先として、データセンターのラック間やラック内のサーバー間などを想定しています。「サーバー機を複数挿入するラックを1台のサーバー機と考える」という構想の実現手段の一つと位置付けています。

 残念ながらIntel社は今回の技術セッションでも、「Siフォトニクス技術の詳細については現時点では発表できない。またの機会に」(同社 Director, Marketing, Silicon Photonics OperationのVictor Krutul氏)と言葉を濁しました。その実力や可能性を見極めるには、もう少し待つ必要がありそうです。

 Siフォトニクス技術がコンピュータやデータセンターの中でどのように使われていくのか。引き続き注目したいと思います。