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東京エレクトロンとAMATの経営統合を読み解く

東京エレクトロンとAMATの経営統合を読み解く

和田木 哲哉=野村證券 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクスグループ マネージング・ディレクター
2013/10/11 07:00
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半導体製造装置業界の日米ナンバー1が経営統合を発表
 2013年9月24日、東京エレクトロンと米Applied Materials社(AMAT)は、早ければ2014年の後半にも経営統合することで合意したと発表した(関連記事)。2012年の半導体製造装置市場の世界シェアは、AMATが14%で1位、東京エレクトロンが11%で3位。両社対等の合併により、新統合会社をオランダに設立する。新統合会社が持ち株会社となって、両社が今後5年程度は独立性を維持しながら、事業を運営する。

 東京エレクトロン普通株1株に対し、統合持ち株会社の3.25株を交付、AMATの普通株1株に対し、統合持ち株会社の普通株1株を交付する。これにより、統合完了後の新会社株の保有内訳は、AMATの株主が68%、東京エレクロンが32%になる予定である。そのため、証券市場では、実質的にはAMATによる東京エレクトロンの買収という判断が下されている。新会社の経営陣は、東京エレクロンの東哲郎氏が会長に、AMATのGary Dickerson氏がCEOに就任。さらに、取締役会は、両社からそれぞれ5名(うち3名が社外取締役)を指名した上で、両社合意による社外取締役1名を加えた11名で構成する。会社が試算する経営統合効果は初年度が2.5億米ドル、3年後が5億米ドル。

ビジネスの重複は少ない

両社はすみ分けているので、競争環境に大きな変化はない
 図1は2012年の両社の各半導体製造装置の市場シェアである。両社の製品はほとんどオーバーラップしておらず、メタルCVDやエッチング装置のように、両社が取り扱っている製品についても、かなりすみ分けができていて、お互いが深刻な脅威とはなっていない。つまり経営統合によって、競合している市場で価格競争が沈静化する可能性は高くはなく、既存製品に係る開発費の低減効果もそれほど大きくは見込めない。供給責任があるため、短期的にシェアが低い方の製品の製造を中止するのも困難であろう。また、個別装置での重複がないため、競合企業から見ても、本経営統合で受注競争が厳しくなるという事態は考えにくい。

図1 主要装置の市場規模とシェア(出所:SEMI統計、会社取材、会社説明会資料などを基に野村證券が作成)
[画像のクリックで拡大表示]

共通プラットフォームや新製品開発の効率化は期待できる
 ただ、東京エレクトロンが、優れたAMATの共通プラットフォームを導入することで、東京エレクトロン側の開発費を若干削減することは可能であろう。また、水面下で進行している可能性がある新製品の開発が重複している場合は、開発費を削減することができよう。また、営業、サービスとも、そのプロダクトに特化したスペシャリストが必要とされるため、直接部門の人員削減効果も大きくは期待できない。サービス・営業拠点の統合による家賃、光熱費の削減効果は期待できる。

露光装置以外のプロセス処理装置がそろう
 今回の経営統合で、新会社には露光装置以外のほぼ全てのプロセス処理装置がそろうこととなり、デバイス・メーカーから見れば、多重露光プロセス、3次元(3D)メモリ、FinFETなどの複雑なプロセス構築において、より効果的な協業ができる可能性がある。一方で、一連のプロセスをソリューションとして提供する「トータル・ソリューション」をはじめ、ターンキー型のビジネスについては、半導体メーカーは拒否反応を示しており、実現は困難であろう。また、両社の技術を持ち寄った新製品の開発などは、このような合併があるたびに統合効果として期待されるものであるが、過去の事例を見ても、成功例がほとんどないため、我々は大きな期待はしていない。

今後見込める効果

取引条件統一による調達コストとキャッシュフロー改善効果
 経営統合による効果であるが、過去の経営統合の例を見ても、ベンダーに対しては、東京エレクトロンかAMATの、より有利な方への取引条件に合わせることで、調達コストの削減が期待できる。顧客に対しては、東京エレクトロンをはじめとする日本の半導体製造装置メーカーが一部の顧客から強いられている不利な支払い条件についての改定が期待できる。また、半導体製造装置に限定すれば、AMATの売上総利益率は東京エレクトロンよりも10ポイント弱高く、収益性改善の面で東京エレクトロンが学ぶことも少なくはないであろう。また、両社が力を入れている、パーツ・サービス収益の強化については、AMATが業界では最も先行しており、経営統合によって、東京エレクトロンの同事業の強化が進もう。

経営改善目標を果たすための作業から相互理解が始まる
 ただし、初年度に2.5億米ドルの改善効果を得るのは簡単ではないと思われる。当該目標は外部に対してだけではなく、内部に対する努力目標でもあると我々は推定する。今後、両社から選抜されたチームが、経営効率化目標を達成するための方針を策定することになると推定されるが、その過程で、相互理解が進み、5年後以降の本格的な統合の地ならしになるものと思われる。今回の経営統合について、当初は両社の社員に衝撃が走ったことは間違いないだろうが、現在ではおおむね沈静化していると推定する。これは、5年間は持ち株会社の傘下で基本的に現在の体制を継続するという方針が示されているからである。5年後の未来については、今回の経営統合の有無にかかわらず、半導体製造装置業界では、誰も先行きが読めないからである。

対等合併の精神を汚さぬオランダでの新会社設立
 オランダに統合持ち株会社の本社を設置するのは、日米のどちらかに本社を置いた場合、置かれた方の会社に統合されるというイメージを社員が持ってしまうためであろう。よって、欧州で、かつ、商業立国を目指し、会社の設立、登記などの手続きが比較的スムーズでビジネス・インフラが整っているオランダが選定されたものと思われる。節税効果は限定的であろう。対等合併で、今後数年は両社の開発・製造体制に大きな変更はないと思われるため、オランダで計上され、同国で課税対象となる利益は、本社機能と資金運用に係るものに限定されると考えられるからである。

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