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 「製造業のビッグデータ活用」をテーマに2013年9月6日に開催したセミナーでは、メーカー各社によるビッグデータの多様な活用法が紹介されました。製品単体や技術での差異化がますます難しくなる中、ビッグデータが差異化の切り札となる。そんな可能性を感じさせる事例が増えています。

 まず登壇していただいたのは、ビッグデータ活用の動向に詳しいシグマクシス(本社東京)パートナーの畠中一浩氏です。同氏によれば、小売りなどで先行していたビッグデータ活用の動きが、ようやく製造業でも本格化してきたとのこと。最近よく見られるのは、グローバル化に伴い、海外工場の品質確保にビッグデータを活用する事例です。

 製造業におけるデータ活用は、あらかじめ仮説を立てておき、それを検証するという手順が一般的でした。しかし、ビッグデータ活用では常識を覆すような結論が得られることも少なくないことから、「仮説に固執せず、分析と実践を短い周期で回すことが重要」と畠中氏は指摘します。そのイメージとして、ソフトウエア開発における「アジャイル」方式を挙げていました。

 畠中氏の動向解説に続き、3社の事例がそれぞれ紹介されました。1社目の日産自動車では、電気自動車「リーフ」において走行経路や充電履歴などの情報をユーザーの利便性向上に用いています。最近では保険会社へのデータ提供も始めました。新たな価値を生むと判断すれば、外部にもデータを提供する方針を掲げています。

 2社目のザインエレクトロニクスは、ファブレスのLSIメーカーです。同社では、製造委託先の品質管理にビッグデータを活用しています。発注量自体は大手半導体メーカーと比べてそれほど大きくないザインエレクトロニクスですが、ビッグデータ活用の成果を製造委託先と共有し、良好な関係を築くことで、製造委託先に「ザインエレクトロニクスと組みたい」と思わせることに成功しています。それが、結果としてビジネスに好循環をもたらすといいます。

 3社目のFDKでは、ニッケル水素電池事業において客先で稼働する電池の寿命予測にビッグデータを用いています。科学的な根拠に基づいて確立した独自の寿命予測技術により、無停電電源/通信基地局/サーバに搭載されたニッケル水素電池の寿命や故障時期を予測し、故障を未然に防ごうとしています。そうすることで、これらシステムの価値を大幅に高めるという戦略です。