2013年9月10日~10月7日にTech-On!のテーマサイト「家電・PC」で、アクセス・ランキングの上位に入った記事は、パイオニアが10年ほど前に発売した「通信機能内蔵カーナビ」の開発物語。1位の「青ざめた韓国」、3位の「大どんでん返し」、4位の「コンパニオンに語らせて」、8位の「いきなりの指名」と、10位までに4本がランクインしました。

 カーナビに通信機能を内蔵するという、当時は世界でも最先端の試み。携帯電話事業者との折衝、データ通信モジュールの調達、新しいビジネスモデルの確立…。今年7月に始まった連載は、10月8日公開の最終話「消えて行く仲間たち」で大団円を迎えました。お楽しみいただけたでしょうか。

 当たり前ではありますが、誰もやっていない新しいことを始めることは難しい。通信カーナビは、それを実現した例の一つでしょう。そうした「誰もやらないことをやれ」と正面を切って言い続けている研究所が、日本企業にも残っています。

 9位にランクインした「敏腕研究者を形づくったディベート力」は、米Intellectual Venturesの上級副社長で日本総代表の加藤幹之氏による人気コラム「華麗なる技術者」の最新作です。ソニー傘下の研究所である「ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)」の社長兼所長である北野宏明氏を取り上げました。

 ソニーCSLには、脳科学者の茂木健一郎氏など著名な研究者が数多く在籍しています。異能を集めると同時に、中長期視点の研究テーマを掲げ続けるという点で、ソニーCSLは異彩を放つ存在。研究開発の「選択と集中」を掛け声に、この10年間で日本のエレクトロニクス・メーカーは基礎研究所や中央研究所を次々と閉じているからです。残っていても、研究開発の視点は製品につながりやすい極めて短期的なものになる傾向が強いのが現状でしょう。

 ソニーCSLで北野氏は異能集団をいかにまとめているのか。そこには、技術開発の創造性や革新性を継続するためのヒントが隠れていそうです。今回はまず、同氏自身の生い立ちを追いました。次回は、同研究所のマネジメントについて語る北野氏の言葉を紹介する予定です。