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第13回●Appleの「A7」やIntelの「Bay Trail」など、話題のSoCの設計から見えてきたもの

第13回●Appleの「A7」やIntelの「Bay Trail」など、話題のSoCの設計から見えてきたもの

2013/10/04 06:00
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 スマートフォンやタブレットの進化に寄与する高性能モバイルSoCの発表が、2013年も相次いでいます。今回はこのうち8種類のチップの設計を検証してみたいと思います(表1および表2)。まず、業界注目のチップとしては、韓国Samsung Electronics社の「Exynos 5 Octa」が同社のスマホ「Galaxy S4」の韓国向けモデルに採用されて話題を呼びました。Exynos5 Octaはその名の通り、「Octa= 8コアCPU」を搭載するチップです。8コアのうちの四つはARM Cortex-A15、残り四つはCortex-A7を実装しています。前者は高速性能に寄与し、後者は低電力性能に寄与するという、英ARM社の「big.LITTLE」アーキテクチャを実現しています。

表1●2013年の話題のSoC8品種の仕様
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表2●GPUが大きな差異化要素に
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最新機能満載の「Snapdragon 800」

 第2の注目チップは、米Qualcomm社の「Snapdragon 800」。2013年初頭に米国ラスベガスで開催された国際家電市「CES 2013」で発表されたチップです。2013年夏以降に多くのスマホに採用されています。Snapdragon 800はいくつもの特徴を備えています。まず、LTE通信として従来よりも高速な通信が可能なLTE Category4の機能を実現したこと。従来の最高速度の理論値は100Mビット/秒でしたが、これが150Mビット/秒に高まりました。

 加えて、28nm世代の「HPM」と呼ぶ新プロセス技術を採用することで、CPUの周波数を最大2.3GHzにまで高めています(従来はSiONプロセス採用で1.9GHzまで)。画像出力についても4Kに対応させるなど機能拡充を図っています。

 同社のSnapdragonシリーズは従来、カテゴリに応じて「S1~S4」と命名されていましたが、2013年からは「200~800」と命名ルールが変わりました。その理由をQualcomm社は、同社が狙うのがモバイル分野だけではなくなったきたためだと説明しています。Snapdragonシリーズに用いられているCPUは、ARMv7の命令セットに基づくCortex-A15相当の「Krait」コア。Qualcomm社独自のCPUコアです。Sanpdragon 800では、HPMプロセスに最適化した「Krait 400」CPUが用いられています。

 第3のチップは、米NVIDIA社の「Tegra 4」です。従来から同社のロードマップで予告されていたチップなので、その仕様は事前に予想されていました。ARM Cortex-A15を4コア、さらには低周波動作に最適化した低電力のCortex-A15を一つ搭載しています。この構成は、前品種「Tegra 3」の設計思想を受け継いだもの。Tegra 3では高速動作のCortex-A9 4コアと、低消費電力のCortex-A9 1コアの計5コアを搭載していました。高速動作と低消費電力を別々のCPUコアで実現するという点は、先に述べたExynos5 Octaと共通しています。いわば、NVIDIA流の「big.LITTLE」アーキテクチャといえるでしょう。

 スマホでは電池を少しでも長持ちさせることと、高速動作の両立が求められます。結果として、各SoCメーカーがそれぞれの設計思想に基づき、様々なCPUコアを使い分けていくトレンドは今後も続くことになりそうです。なお、Tegra 4はスマホだけでなく、NVIDIA社独自のAndroidゲーム機「SHIELD」に採用され、先だってデビューを果たしました(図1)。

図1●NVIDIA社オリジナルのゲーム機「SHIELD」。Tegra 4を採用した。
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 第4のチップは米Texas Instruments(TI)社の「OMAP5」。OMAP5の仕様は2011年に明らかにされ、2012年にはモバイル用途で市場投入される予定でした。ところがその後、TI社が方針を変更し、産業機器や車載機器向けにターゲットを変えたのです。結果として、モバイル分野では採用されませんでしたが、機能は他社のモバイルSoCに劣っていません。もともとモバイル端末向けに仕様を固めてきたチップだけあり、そのままスマホに搭載しても十分に他社のSoCに対抗できそうです。28nmプロセスを使い、Cortex-A15を2個搭載しています。

 第5は、米Intel社の「Bay Trail」です。今回取り上げる7種類のチップのうち、系統が異なる唯一のチップになります。相違点の一つは、CPUがARM系ではないこと。Intel独自のAtomプロセサを採用しており、同社のAtomプロセサとしては初のQuad Core構成を採用しました。モバイル・プロセサとしては初となる、22nm世代FinFETプロセスを用いているという特徴も備えます。本チップはすでに複数社のタブレット端末に採用されています。

早期に他社情報を入手できたAppleならではの「A7」

 第6は、先だってApple社が発売した最新スマホ「iPhone 5s」に採用した「A7」プロセサです。ARMv8と呼ばれる64ビットのCPUアーキテクチャが採用されています。ARM社がリリースする「Cortex-A57」に相当するCPUです。

 Apple社は、Cortex-A57を独自にチューニングし、「A7」として今秋のリリースに間に合わせました。一般に最先端SoCの開発と量産には最低でも1年を要しますので、2012年の段階から開発に着手していたことは確実でしょう。iPhone 5sの発売が2013年9月20日、ARMがCortex-A57を発表したのが2012年10月の「ARM Techcon 2012」(米国サンタクララで開催)です。逆算するとこの間、1年未満の時間しかありません。すなわちApple社は、ARM社の発表以前にCortex-A57に関する情報を入手し、それに基づいてA7の開発にいち早く着手していたものと思われます。

 本コラムで回を改めて書きますが、A7はSamsung社のExynos5 Octaと同様に、Samsung社による28nmプロセスで製造したチップです。Samsung社の28nm世代チップが最初に世に出たのは2013年春ですから、その設計部品であるライブラリやトランジスタ・モデルなどが1年以上前に手元になければ、SoCの設計・開発には着手できないはず。この点からもApple社は2012年の早い段階で、Samsung社の28nm技術の情報、およびARM社の64ビットCPUコアの情報を入手していたといえそうです。

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