パルプの状態で疎水化

 CNFを樹脂に均一に分散させようとした場合、これまでネックとなっていたのがCNFと樹脂の相溶性(なじみやすさ)の低さだ。前述のグリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発プロジェクトでは、この相溶性を大幅に改善する技術の開発に取り組み、成功させた。

 その技術とは、一言でいえば、CNFの表面を疎水化処理するというものだ。CNFは極性の高い物質。一方、PPやPE、PAは極性がない、あるいは極性が低い樹脂。このため、CNFとPP/PE/PAは水と油のようになじみにくく(相溶性が低く)、均一に混ぜ合わせることが難しかった。この相溶性を高めるために実施するのが前述の疎水化処理である。CNFの表面にある水酸基を疎水性の官能基で置換することで、CNFの極性を下げてPP/PE/PAとなじみやすくする。

 もっとも、同技術では、そうした疎水化処理をCNFに対してではなく、CNFの原料となる製紙用パルプに施す。CNF強化樹脂の製造を効率化するためだ。CNF強化樹脂を造るには、製紙用パルプをCNFの状態までほぐし〔ナノ解繊(かいせん)し〕、そのCNFを樹脂に均一に分散させなければならない。

 このナノ解繊と均一分散を2軸の押し出し機を使う混練工程の中で連続して実施できるようにするのが、先の疎水化処理だ。ナノ解繊と均一分散を別々の工程で実施しないで済むため、製造を効率化し製造コストを低減することが可能になる。

 具体的には、疎水化処理済みのパルプと樹脂のそれぞれを2軸の押し出し機に供給する。そして、2軸のスクリュの回転によってパルプをCNFへと機械的にほぐし、それを樹脂と混ぜ合わせる。CNFは既に疎水化処理されているのでPP/PE/PAといった樹脂との相溶性は高く、CNFと樹脂は均一に混ざっていく。