小規模ビルでも導入しやすいBEMS(ビルエネルギー管理システム)が北米で注目されている。ビルの電力を制御してエネルギー効率を上げるBEMSは、大規模なビルほど省エネ効果が大きく導入が進んでいるが、小規模ビルはこうしたIT(情報技術)の費用対効果が見えにくく、大規模ビルほどには普及していない。

 これに対し、カナダRegen Energyが提供するBEMSは、コントローラーを設置するだけという既築ビルにも簡単に取り付けられる利点が認められ、小規模ビルでの設置が増えている。

通常は1~2日で設置完了

 Regen EnergyのBEMSは、装置がコントローラーのみという単純な作りである(図1)。このコントローラーをエアコンやポンプなどの電力制御したい設備すべてに設置する。コントローラーは相互にデータをやり取りして、ビル全体のエネルギー効率を最大にするよう、設備をそれぞれ制御する。

図1 各設備に設置するコントローラー(写真: Regen Energy)
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 「コンセントレーラー」のような情報を集中管理する設備は不要である。それぞれのコントローラーが情報をやりとりしながら一つの目的に向かって連携して動作する様子が、ハチの群れの行動に似ていることから、Regen EnergyのBEMS技術を「SWARM(群れ)」と呼ぶ(図2)。

図2 コントローラーが連携してエネルギー効率を上げるSWARM技術(図 Regen Energy)
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 コントローラーは、ZigBee(ジグビー)無線通信モジュールを内蔵し、コントローラー間が800メートルまでは通信可能である。コントローラーの設置は、1個当たり20~40分で済む。よほど大きなビルでなければ1~2日で完了する。この手軽さが受けて、顧客の95%が既築ビルである。これまで既築ビルに簡単に設置できるソリューションがなかったため、多くのビルオーナーが設置に動き出した。

 現行のコントローラーの応答速度は2分。これでもデマンドレスポンス(DR、電力需給の逼迫度合いに応じて需要抑制にインセンティブを与えたり、消費にペナルティーを科したりして需要を抑制する仕組み)への対応は十分だが、さらに2013年9月に発売される新製品では1秒に短縮される。これであれば、高速DRにも対応できるスピードだ。電力市場の価格変動に対応して、リアルタイムで制御することもできる。