本連載では、テクノ・システム・リサーチ(TSR)のアナリストに、スマートフォンやカメラ、センサなどの市場動向に関するレポートを寄稿してもらう。第5回はスマートメーターやマイコンメーターといった電力メーター市場の動向について、同社 アナリストの吉田和美氏が分析する。(日経BP半導体リサーチ)

 世界における電力メーターの総設置台数は、2012年時点で15億台であり、地域別では、中国が3.3億台、欧州全体では3億台、さらに北米市場においては1.5億台となっている。その他、日本市場は8200万台の市場であり、新興国市場を中心とした地域では、6億台の電力メーターが稼働している(図1)。従って、単年出荷では、2012年1.5億台の市場となっており、2020年にかけても単年出荷ベースでは、1.5億台の市場を維持していく。

(TSRの資料)
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 電力メーターは、機械式→マイコン式(=マイコンメーター)→通信機能搭載スマートメーターと高機能になるため、昨今スマートグリッドのキーデバイスとしてスマートメーター市場への関心が高まっている。2012年時点では、機械式・マイコン式・スマートメーターの設置ベースでの割合は、61%、21%、18%であり、機械式メーターが圧倒的な市場占有率を保持している(図2)。

(TSRの資料)
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 一方、出荷ベースでは、2012年の単年出荷台数が1.5億台であり、その内訳は、機械式が(単年出荷)2900万台、マイコンメーターが(単年出荷)5300万台、さらにスマートメーターが(単年出荷)6800万台であり、2020年にかけては、マイコンメーターとスマートメーターが機械式メーターを代替していく(図3)。

(TSRの資料)
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スマートメーター市場


 2012年、スマートメーター市場は、単年出荷6800万台であり、そのうち中国が4500万台と最大の市場となっている。中国では、2020年までに現在の3億台の電力メーターを4億台へと増加させ、すべてをスマートメーターへと代替する予定である。そのため、急速にスマートメーターの導入が加速しているが、8ビットから32ビットまで幅広い仕様のスマートメーターが導入されており、通信方式もPLCであるものの、互換性を持たないものが利用されてきた。2015年以降、互換性を持たせた従来よりも高仕様のスマートメーターが導入される予定であるが、入札のペースが非常に早く、不安定な市場となっている。

 一方、中国に次ぐ市場は、北米市場であり、単年出荷1300万台の市場となっている。北米では、補助金を加味した政策ベースでの導入が進んでいたが、2012年をめどに大幅な導入は減速をしていく。通信方式に関して、北米では、900MHz帯のRFが主流であるが、PLCやCellularとの組み合わせも導入されてきており、今後は、HEMSを含んだ電力マネージメントが活発になることが予想されている。

 導入のピークを迎える北米に変わり市場をけん引していくのは、欧州市場である。欧州では、2020年までに、80%の電力メーターをスマートメーターへと代替することを目標としているため、2012年時点では単年出荷450万台の市場も、2018年には単年出荷2400万台の市場へと拡大する。欧州での導入は、PLCが有力であるが、一部では、RFやCellularの導入も期待をされている。

 その他、日本市場は2011年の震災以降、スマートメーター導入への動きが活発であるが、関西電力を除いた本格的な導入は、2014年以降と見込まれている。その際の通信方式は、920MHz、Cellular、PLCの混在であるが、関西電力・九州電力を除く各電力会社は、東京電力の採用結果を踏まえた上で導入を開始する可能性が高まっている。