デジタル・カメラやスマートフォンのカメラ・モジュールに使われるCMOSイメージ・センサは、多画素化や高感度化といった撮像性能の強化という軸で進化してきました。そのCMOSイメージ・センサに、多機能化という軸での進化が始まっています。RGBそれぞれの色の光の強さを測る撮像機能に加えて、合焦(オートフォーカス)のための情報を取得したり、入射した光に左目用と右目用の視差を与えたりできるようにしています。イメージ・センサの“種の爆発”の前触れかもしれません。

 背景には、受光部の画素の構造上の工夫に、限界が近づいてきたことがありそうです。これまでCMOSイメージ・センサは、画素のざらつきが目立たないように画素数を増やしながらも、個々のフォトダイオードに十分な光が届くように工夫を続けてきました。

 光学部品の大きさやコスト、そしてセンサそのもののコストの制約があるため、単純に大判化を進めるわけにはいきません。画素を増やすと画素の面積が小さくなってフォトダイオードに届く光が減ってしまいます。そこで、フォトダイオードからの信号を伝える配線の微細化や、配線を受光面の裏側に形成する裏面照射技術の採用などによって、感度を確保してきたのです。そうした改良が進んだことで、単に配線の微細化を進めるといった対策だけでは効果を得にくくなっています。

 そこで『日経エレクトロニクス』2013年9月16日号の解説記事「“一人二役”で多様化するイメージ・センサ」では、多機能化という別の進化軸に注目してみました。この記事の取材を通じて強く感じたのは、CMOSイメージ・センサの多機能化が新しい市場を切り開く可能性を秘めていることでした。

 例えば1枚のCMOSイメージ・センサで3次元(3D)映像を撮影したパナソニックは、「医療機器や産業機器の分野で、より簡便に3D映像を撮影したいというニーズがあった」と説明します。内視鏡のように光学系が小さな機器で3D映像を取得できるようになれば、内視鏡手術に大いに役立つ可能性があるそうです。今後も新たな機能がイメージ・センサに付加されることで、画像の新しい用途や、画像を使う新しい機器が生まれそうです。こうした多機能化を、引き続き注視していきたいと思います。