3次元データプロセス改革を進める際、業務の見える化を図ることは多い。しかし、この業務の見える化の量と質には、企業によるばらつきが非常に大きいのが現状である。莫大な工数を掛けて業務の見える化を行ったにもかかわらず、その投資に見合った効果が得られていない場合も少なくない。

 その典型的な例が、3次元データを使用する業務を見える化し、そのフローを網羅的に作成することである。漠然と「確かに工数が掛かるが、必要不可欠なこと」と感じていらっしゃる方は、本当に効果が得られることなのかどうか、もう1度確認することをお勧めしたい。その理由と確認のポイントを、以下に解説する。

業務の見える化対象:「過程」と「結果」

 まず、業務の見える化対象として、「過程」と「結果」の2つがあることを押さえておきたい。「過程」は、業務の手順や内容である。手順は業務フローなどで表現され、内容はデザインレビュー(DR)チェックリストなどで表現される。「結果」は、品質、コスト、リードタイム、売り上げなどである。品質は、品質問題発生件数や品質ロスコストなど、コストは製品原価や開発費など、リードタイムは開発期間、納期遵守率など、売り上げは売上高や販売台数などで表現される。

 問題は、「結果」の見える化が不十分なことである。業務フローやDRチェックリストなどで業務の過程を詳細に把握しても、その結果の良しあしが分からなければ、現状の業務の進め方やチェック内容の良否や改善策を判断できない。業務の見える化は、何らかの結果を得ることを目的に行うはずであり、その目的に対する現状を把握することは必須である。

 具体例を挙げておこう。品質向上を目的とし、品質問題発生件数を削減することを目標とした場合であれば、最初に把握すべきなのは目標とする件数と現状の件数の差異である。その後、業務の進め方やチェック内容の中で差異を発生させている要因を見極め、改善案を立案していく。このようなロス発生に対する改善の例だけでなく、開発リードタイムの短縮を目的とした開発標準期間の短縮などでも、目標とする期間と現状の期間の差異から改善策を立案する。

 この方法は、言ってみれば結論を先に押さえる方法であり、問題解決の考え方では普通の進め方であるが、システム構築を前提とした業務改革の際によく見られる方法とは進め方が逆になる。すなわち、まず業務フローを作成し、「この場面で『過去トラ(過去に生じたトラブルと対策の事例)』を参照できれば品質問題を低減できるのでは?」「この転記作業をなくせばリードタイムを短縮できるのでは?」と積み上げていくのとは、逆方向のアプローチである。