これまで2回に渡って、スマートフォンを用いたクレジットカード決済サービス「Coiney」を立ち上げたベンチャー企業、コイニーのサービス開発について分析してきました。たった4人で短期間にカードリーダーとスマートフォン向けアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)、セキュリティーを確保した決済取引システムを開発。大手クレジットカード会社と資本業務提携を結んで、大手企業と渡り合っています。(前々回のコラム「『知らなかった』からこそ、前に進めた」、前回のコラム「商品箱を開けるユーザーの表情、想像したことはありますか」)

 その分析から見えてきたヒットの要諦は、四つありました。

■ボケての「ヒットの要諦」
その1:
開発対象の製品やサービスの周辺情報を調べすぎるな!
その2:
当初の大きなビジョンを熱くメンバーに伝え、方向性を共有せよ!
その3:
まずはコンセプトを徹底的に議論し、
技術や機能にストーリー性を加えろ!
その4:
開発のコンセプトは少人数で固め、ぶれない開発を実現すべし!

 今回は、コイニーの創業者で社長の佐俣奈緒子氏へのインタビューをお届けします。同氏の話からは、日本で生まれている新しいタイプのリーダー像が垣間見えます。(以下、聞き手は筆者)

―― クレジットカード決済というリスクが高そうな分野で事業を始めてみようと思ったキッカケは何だったのでしょうか。

佐俣 前職は、米PayPal社の日本法人でマーケティングを担当していました。国内のショッピング・サイトなどにPayPal社の決済サービスを導入する仕事です。それを経験する中で「日本では決済システムの導入に時間と手間が掛かる。簡単さが足りない」と感じていました。

 PayPalはインターネット上の取引ですが、これがリアルな店舗でのクレジットカード決済ならどれだけ大変なんだろうと思ったんです。店舗の経営者が導入を考えても、面倒な作業がハードルになっているのではないかと。

 リアル店舗でのクレジットカード決済は、インターネット上の決済よりも市場規模が大きい。国内のクレジットカードの発行枚数は、3億枚を超えています。これからスマホの普及は加速していくでしょう。そうした状況を考えると、今までクレジットカード決済を利用していなかった店舗がスマホで簡単に導入できるようになれば、きっと普及するだろうと思いました。それなら、自分でやってみようと退職したんです。