カルチャーを醸成しないと烏合の衆に

 歴史のある大会社であれば、その会社が作り出す製品・商品についてのポリシーや、暗黙の了解が技術者の中に存在しているでしょう。でも、それは創業当時に少人数で作り上げたものだったに違いありません。

 ゼロから事業を始める際には、メンバーの中で人工的に発酵状態を作り出す必要があります。成長に向けた勝負のタイミングで攻勢をかける時に統一されたカルチャーがなければ、開発の方向性はずれ始めます。人数が多くなればなるほど、統制の取れない、ただの烏合の衆になってしまうわけです。

 タイミングを誤ってセキュリティーの監査やシステム開発のために大量の人員をサービス開始前に加えてしまっていたら、コイニーもまだコンセプトを見失っていたかもしれません。大きな勝負をするには多額の資金と多くの人材が必要ですが、それを上手く有効に機能させるための条件を適切に整備するのは難しい。コイニーの人材採用のタイミングは皆さんにも参考になるのではないでしょうか

 ここまでで、コイニーがどのようにサービスを開発してきたか、その開発の過程を分析してきました。そこから得られる「ヒットの要諦」は、大きく二つあります。いずれも、製品やサービスのコンセプトに関わるものです。

■今回の「ヒットの要諦」
その1:
まずはコンセプトを徹底的に議論し、
技術や機能にストーリー性を加えろ!
その2:
開発のコンセプトは少人数で固め、ぶれない開発を実現すべし!

 機器やサービスで競合との差異化を図るためには、技術的な機能の実装や性能で上回ることがもちろん重要です。しかし、その競争はある程度まで行き着くと、どの製品でも差が付かない状況に陥ります。その後に待っているのは、価格競争です。スマホや液晶テレビといった家電製品の現状を見れば、それは明らかでしょう。

 その時にポイントとなるのは、ブランド力です。これを実現するカギは、「使い勝手」を含めたユーザー体験の価値を高めていくことや、製品やサービスの背後にあるストーリー性を感じさせることです。つまり当初からブランド化を意識した開発をしていく必要があるわけです。そして、多くの人材が関わるようになってもぶれないコンセプトを、少人数で徹底的に議論することが重要になります。コイニーの例は業務用機器であっても、これらの取り組みが大切になっている現状を象徴しているのではないでしょうか。

 次回は、Coineyを作り出した佐俣氏に聞いたインタビューの肉声をお届けしたいと思います。