従来の常識や商慣習を覆す威力

 Coineyの開発ストーリーに入る前に、まずはスマホを使ったクレジットカード決済について、簡単に説明しておきましょう。旧来のクレジットカード決済と何が違うのでしょうか。

 まず、決済端末の取り扱いの自由度や導入費用の違い。例えば、Coineyのカードリーダーは直径29.6mmの円型で厚さは14.1mm。スマホに接続するプラグを含めても最大の長さは47mmです。スマホに取り付けても、既存の決済端末に比べ、かなりコンパクトになります。スマホの価格がありますから単純には比較できませんが、カードリーダー自体の価格は既存の決済端末に比べて圧倒的に安価です。

Coineyのカードリーダー。スマホのイヤホンジャックに装着して使う

 何より、移動通信網でカード情報をやり取りするので、端末を店内で気軽に持ち運べます。極端な例を挙げれば、スマホさえあれば道端の屋台でもすぐに導入できるわけです。これは、従来はほぼ必須だった有線の専用通信回線を設置するコストが必要ないことを意味します。

 もう一つの違いは、手続き上のものです。既存のクレジットカード決済では、加盟店申請の審査を通って、実際に店舗に決済端末が設置されるまでに1カ月ほど掛かっていました。運用費用でも、従来は加盟店手数料や月額利用料などを店舗側が支払う必要がありました。

 一方、スマホを使ったクレジットカード決済では、導入までの期間を1週間程度に短縮しています。店舗側の運用費用も決済ごとに支払う決済手数料だけ。審査や決済に必要なシステムを効率化することで、これを実現しています。

 つまり、スマホを使ったクレジットカード決済は、導入コストや運用コストを抑え、クレジットカード決済を導入するハードルを下げたサービスと言えるでしょう。これまでクレジットカード決済の導入に二の足を踏んできた中小規模の商店にも広がる可能性を秘めている。もしかしたら、既に導入済みの店舗でも置き換えが活発になるかもしれない。これが、大きな注目を集めている理由です。

 最後に、Tech-On!読者に多い機器メーカーの立場からすると、さらに大きな違いがあります。それは、スマホを用いたクレジットカード決済を手掛ける事業者は、カードリーダーを開発する機器メーカーであると同時にアプリ開発や決済取引サービスの運用を手掛けているということです。

 従来のビジネスモデルでは、決済端末を開発する大手エレクトロ二クス・メーカーと決済取引サービスがほぼ切り分けられていました。売り切り型のビジネスモデルです。スマホを用いたクレジットカード決済の登場で、このビジネスモデルが大きく変わる可能性があるわけです。