前回はアンテナの各種とその特性・用途について説明しました。今回は知られているようで知られていない(?)アンテナ・カタログの読み方について紹介します。

 まず、アンテナ・カタログの一例を示します。これは架空の 2GHz 帯 5dBi コリニア型のオムニ・アンテナです。

Type OmnidirectionalCollinear
Frequency Range 2000MHz - 2500MHz
Gain 5dBi
Beam Width E-Plane: 30deg H-Plane: 360deg
Max Input Power 100W
Impedance 50 ohm
VSWR < 1.8
Connector N-Female
Wind Speed Limit 200km/h
Weight 185g
Dimensions L: 150mm D: 24mm
Operating Temperature -40 to +85 C

 以下、このカタログ項目の読み方とポイントを説明していきます。

Type
 これは前回説明したアンテナの基本形態を示しています。ただし同じタイプのアンテナでも、メーカーによって指向特性に注目して「オムニ」と書いてあったり、アンテナ構造に注目して「コリニア」と書いてあったりするなどの差異があります。

Frequency Range
 アンテナの対応する周波数帯域を示しています。通常は一つの周波数帯だけ(シングルバンド)ですが、二つの周波数に対応するデュアルバンド型や、三つの周波数に対応するトライバンド型もあります。また、特に周波数帯域の広いものを「ワイドバンド」と呼ぶ場合もあります。

Gain
 アンテナの最大利得を示しています。あくまで最大感度方向におけるピーク値なので、必ずしも有効角度全域でこの利得が得られるわけではないことに注意してください。例えばこのアンテナでは5dBiで半値角30度ですから、アンテナ中心線から±15度ずれた位置では2dBiの利得しか得られないことになります。

Beam Width
 E面、H面における半値角を示しています。メーカーによってはE、HではなくV、 H(Vertical、Horizontal)と表記している場合もあります。指向特性を示すチャートが付属している場合が多いのですが、このチャートの読み方は別途説明します。

Max Input Power
 最大入力電力を示しています。この限界を超えるとアンテナは過熱や放電で破損してしまいますが、無線 LAN の世界では通常100mW以下、1Wを超えることは滅多にないのであまり心配ありません。

Impedance
 インピーダンスを示しています。とりあえず無線LAN用では50Ωという値に一致していれば OK です。

VSWR
 後ほど説明しますが、定在波比という値で、ケーブルから入力された電力をアンテナがどれだけ効率良く変換するかを示しています。値は小さいほど優秀であることを意味しています。周波数に対する VSWR 値の変化を示すチャートが付属している場合がありますが、この読み方も後で説明します。

Connector
 アンテナに接続するケーブルのコネクタ形状を示しています。MaleとFemale はネジのオスメスではなく、コネクタ芯線のオスメス形状を示しているので注意してください。コネクタの種別については別途説明します。

Wind Speed Limit
 アンテナの耐える最大風速を示します。走行する列車だとか高いビルの屋上に付けるような用途でない限り、通常は心配する必要はないでしょう。

Weight, Dimensions, Operating Temperature
重量、大きさ、動作温度範囲などの表記は他の電子部品と同じです。