道路や橋、上下水道といった社会インフラの老朽化が深刻さを増している。とりわけ日本は人口減少も始まっており、インフラの保守・保全は社会全体の大きな課題と言える。

 こうした課題解決を支援するものとして注目されているのが、モノの状態変化を自動的に測定し、変化の傾向を把握できるようにするセンサーネットワークである。こうした社会的な課題に役立つ技術や仕組みを、日経BPクリーンテック研究所では「ソーシャルデバイス」と呼ぶ。そのソーシャルデバイスの導入が様々な領域で進んでいる。

写真1●東京ゲートブリッジ
(写真:東京都港湾局)
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 国内の代表的な採用例の一つは、東京ゲートブリッジである(写真1)。

 全長2.6kmの橋のうち、主橋梁と呼ばれる中央部分に各種のセンサーを配置して、ひずみ、伸び縮み、主橋梁と隣接橋をつなぐジョイント部分の離れなどをモニタリングしている。

要点検かを短時間に判断

 目的は大きく3つ。第1は地震など災害に備えた監視である。橋台や橋脚上で橋桁を支持する支承の移動制限装置、座屈(横溝部材)、橋脚と橋をつなぐタイダウンケーブルといった、地震によって損傷しやすい部分の変化を、光ファイバーを使った加速度センサーなどにより監視する。

 具体的には、元の位置からのずれと、それぞれの部分にかかっている力を測ることで、各部材の健全度を診断する。こうすることで、橋が利用できる状況にあるかどうかをどうかを30分以内に判断する。異常そのものを検知することはできないが、異常の可能性がある場所を絞り込めるため、くまなく実施すると専門家でも3時間近くかかる点検作業を効率化できる。

 第2の目的は、日々の橋梁管理である。東京ゲートブリッジの場合、監視対象の主橋梁は鋼材が溶接やボルト締めされ1本としてできている。これが、温度によってわずかながら伸び縮みする。つまり、主橋梁の挙動は、温度変化とほぼ同期して変わる。これが同期しない状態になっていると、どこかの部位に問題があり、予期せぬストレスがかかっていると判断できる。こうした状態を放置せず、早めに保守できるようにモニタリングしているわけだ。

 第3の目的は、路面を支える鋼床版(床版は橋の上を通る車両の重みを橋桁や橋脚に伝えるための床板)の保全。具体的には、通過した車の重量を測定している。橋は重量がかかるほど痛んでいく。ただ、どの程度の重量がかかると、どの程度痛むのか、いまのところ、具体的な指標はない。そこで将来のためにデータを蓄積している。

 現時点では、保全の際に、特に大きな負荷がかかっている部分を見定め、そこを中心に管理している。例えば東京ゲートブリッジの場合、上り車線では積載量が多いトラックなどはどうしても走行車線を走る。このため、追い越し車線側よりも走行車線側を中心に重みがかかっているという。

 これと同様の橋梁モニタリングの仕組みは、実証実験の位置づけで、首都高速道路の横羽線など3カ所に導入されている。最近では、NTTデータがベトナムにある東南アジア最長級のカントー橋向けに、橋梁モニタリングのソリューションを提供したことを明らかにしている。