「iPhone 5c」は99米ドルから手に入る(写真:米Apple社)
「iPhone 5c」は99米ドルから手に入る(写真:米Apple社)
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“普通”の成長戦略にも手詰まり感

 公開企業であるAppleにとっては、投資家の期待に応える成長戦略が必要で、その一つがiPhone 5cの市場投入だ。コモディティ化が進んだスマートフォン市場において低価格を強みに出荷を伸ばす可能性は高い。また、中国をはじめとする新興国市場へ、もっと切り込める。

 9月11日に正式発表となったNTTドコモによるiPhone 5s/5cの販売開始もAppleにとっては成長戦略である。それまで「iPhone」を扱っていなかった主な通信事業者は、中国China Mobile社とNTTドコモ。2事業者へのiPhoneの提供はAppleの売り上げ拡大に直接的に寄与する。China Mobileについての正式発表は現時点ではないが、同社がiPhone 5cを近々扱うとの報道がある(外部サイト「ITpro」の記事)。

 廉価版の投入と取り扱い事業者の拡大は、スマートフォン・メーカーが売り上げを伸ばすための当然の事業戦略と言える。しかし、新しいジャンルのヒット商品を立て続けに世に送り出してきたAppleの戦略となれば、話は変わる。同社には現時点で打つ手がないのではないかと勘繰りたくなる。

 製品ラインナップの拡大は、製造・販売・在庫管理の効率を下げ、しかも追加したのは低価格品なので、同社の収益力の低下要因となる。さらに、China MobileのiPhone採用が決まれば、その後は取り扱い事業者を大きく増やすことは見込めない。“普通の成長戦略”にも手詰まり感が出てくる。もっともiTVが、噂通りに2013年中、9月にも発表されてヒット商品となれば、不安は杞憂に終わる。