産業用ネットワークの連載の最後ですので、今後の予想を書きます。

 産業用ネットワークはここ30年くらいの間、工場内の機器のインテリジェント化と通信の高速化、大容量化という技術の進歩に支えられて進化してきました。CPUを搭載したインテリジェントな(頭の良い)機器・装置が増えて、それらの機器・装置間でデータ・情報のやり取りを高速に、簡単に、しかも安定して通信していくために、今までのクローズドなネットワークからオープンな産業用ネットワークが登場し、マーケットに受け入れられて、普及をしていったわけです。

 現在もCPUの進化とネットワーク技術の発展が続いていますので、おそらくこの技術的な進展はしばらく継続していき、マーケットも拡大の基調を続けるでしょう。

オープン・ネットワークのメリットをもっと生かす

 しかし、技術の進歩で産業用ネットワークの機能が増しているといっても、進化した分の機能が使われているかは疑問です。現在、オープンと呼ばれるネットワークが採用されているのは、工場で使われているネットワーク全体から見るとまだまだ一部です。この連載で説明してきた産業用ネットワークの多くは、主に現場機器と制御機器間の通信で、また、そのほとんどが制御用のデータ(測定値、操作値)を通信するだけになっています。つまり、単に以前からのアナログ方式(例えば、4~20mA)でのデータのやり取りをデジタル通信技術によるものへと置き換えていっただけで、ネットワークの用途は「制御」に関連したものがほとんどです。

 デバイス統合の回(第13回)でも説明しましたが、現場機器の機能がアップし、外部へ出すデータ、また外部から取り込むデータが増えるにつれ、産業用ネットワークを(アナログ方式の置き換えでなく)、制御以外のデータを通信する技術として、使用していくことが増えていくと期待されます。デジタル通信でしかできないアプリケーションが、しかもオープンな環境で使用されることで、オートメーションにデジタル通信技術を採用するメリットを認識させてくれるでしょう。