バカと笑われるリーダーが最後に勝つ トリックスター・リーダーシップ、松山淳著、767円(税込)、新書、248ページ、ソフトバンククリエイティブ、2013年7月
バカと笑われるリーダーが最後に勝つ トリックスター・リーダーシップ、松山淳著、767円(税込)、新書、248ページ、ソフトバンククリエイティブ、2013年7月
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 この新しいリーダー論を展開する前に、松山氏は一つの事例を紹介する。

 地方のとある企業から30代S係長のコーチング依頼を受けたときのこと。組織変革への強い意欲を持つS係長との初セッションで、「うちのメンバーは思ったよりやりますよ」と、同僚を見下すような発言が気になったが、まずは目標の明確化から始めた。月に1度会ってコーチングするという方式で、2度目も特に問題はなかったのだが、3度目のセッションに現れたS係長は、意気消沈していた。

 変革チームの自主勉強会で、「運営の仕方がよくない」とクレームが噴出したのである。聞けばS係長は1週間前に勉強会の告知をしたという。もっと開催期間に余裕を持たせるべき、というチーム・メンバーの反対を押し切ったのだ。直前に知らせた理由は「それでも社員は来るのか試してみたかった」から、とのこと。

 同僚を見下すような発言が気になっていた松山氏は、このタイミングを逃さず、S係長に言った。
 「Sさんは仲間を信頼せず、試すのですか」
 「試された人たちはどんな気持ちだったのでしょうね」
 「Sさんは他人から試されたいですか」