法則3:定量的な成功基準と結果指標のマイルストン管理

 ものづくり改革成功企業は、定量的な成功基準を設定し、最終的なゴールだけでなくマイルストンも含めた目標管理を徹底している。定量的な成功基準の設定例をいくつか紹介しよう。

例[1]
目的:新興国売上を増大するために、受注から出荷までのリードタイムを短縮する。
成功基準:製品開発リードタイムを現行比30%短縮し、新興国売上を30%増大する。達成時期は2年後とする。

例[2]
目的:技術系システムのIT運用コストを削減するために、全社で製品開発プロセスを標準化する。
成功基準:製品開発プロセスの標準化率を90%。全社技術系システムのIT運用コストを30%削減する。達成時期は3年後とする。

図4●結果指標のマイルストン管理
図4●結果指標のマイルストン管理
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例[3]
目的:品質不具合を削減するために、テストのプロセスを全社的に標準化する。
成功基準:テストプロセスの標準化率は80%。品質ロスコストは現行比30%削減。達成時期は2年後とする。

 定量的な成功基準には、 いずれも具体的な数値目標と達成時期が明記されていることがお分かりいただけるだろう。また、最終的なゴールだけでなくマイルストンも設定している。成功基準の達成時期が3年後だとすると、マイルストンは1年単位で設定しており、それに合わせて、プロジェクト・リーダーはプロジェクト・オーナーにマイルストンに対する達成進捗を報告しているのである。定性的な内容(活動内容に関する進捗)だけでなく、定量的な進捗(成果の達成度合い)を重視した報告を行っていることが多いと感じる。

 余談であるが、定量的な成功基準の設定には副次的な効果もある。ものづくり改革プロジェクトは時間とともに複雑化する。それに伴い、複数要素を考慮した意思決定を行う場面が増加するのである。たとえばPLMシステム構築において、ユーザの要望を受け入れるとコストがアップするが、どこまでの要望を取り入れるべきかを判断するようなケースだ。

 プロジェクト・リーダーは、さまざまな判断を行いながらプロジェクト遂行せねばならない。判断ミスにより目標達成が遠のくこともあり、その判断の精度は非常に重要だ。しかし、定量的な成功基準に立ち返って「何が成功基準達成への最短距離なのか」「優先してやるべきことは何なのか」を考えれば、判断ミスを起こすリスクは低減できるはずである。定量的な成功基準の設定と、マイルストンでの徹底した目標管理、これが成功企業の3番目の共通法則なのだ。

 次回は、4番目以降の改革成功の共通法則を紹介していく。