法則2:本質課題へのアプローチ

 ものづくり改革の成功企業は、その企業の本質的な課題に対してアプローチしている。本質的な課題にアプローチするとは、企画フェーズで必ず次のようなステップを踏んでいるということである。

[1]経営指標や業務プロセスに対する客観的な現状分析を行っている。

[2]問題事象と原因の関係を把握し、問題事象を発生する本質的な原因を特定している。

[3]本質的な原因に対する直接的な解決策を提案している。

 ちなみに、医学の言葉では、表面的な問題に対する治療のことを「対症療法」と呼ぶらしい。これは、体の痛い箇所に痛みを緩和する薬を付けることで当面の処置を行うが、痛みの原因が別にある場合、本質的な解決にはなっていないことを指す。

 ものづくりの事例で考えてみよう。例えば「納期遵守率が低く、顧客からクレームが多発している」という問題が発生していたとする。この問題に対し「納期管理を強化する」という対策を講じた。これにより納期遵守率は改善したが、残業や時間外労働が増加し、トータルではコスト増となり本質的な改善には至らなかった。納期が守れない原因を追及してみると、受注することを重視するあまり、顧客個別の特注設計が多くなっていたことが判明した。そこで受注仕様を標準化し、極力標準仕様で受注するように営業を啓発した。これにより特注設計数は削減され、時間外費用の増加なしで納期遵守率を改善することができたのである。

 この事例の場合、納期管理強化は表面的な問題に対してしかアプローチできておらず、対症療法だったということが分かる。これに対して、原因を突き止めてその治療を行うことは「原因療法」と呼ばれる。文字通り、本質的な原因に対して治療することである。この例では、受注プロセスの改善が原因療法だったのである(図3)。

図3●本質課題に対するアプローチ
図3●本質課題に対するアプローチ
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 ものづくりプロセス改革成功企業の2番目の共通法則は、本質課題を特定し、それに対する解決策を実践することだ。