法則1:明快な改革コンセプト

 最初に紹介するのは、ものづくり改革成功企業は「企画フェーズで策定する改革コンセプトが明快である」という点だ。改革コンセプトとは、文字通り今後実施する改革の内容をシンボリックに表現したものであるが、ここではこの「明快な改革コンセプト」について深掘りしてみたい。

 成功企業の改革コンセプトには、通常次のことが含まれている。

[1]改革を実践する企業と、その企業に関係する事業に関わる人々に、ビジネス的な価値を提供している。

[2]その企業にとって、新しい業務方式やワークスタイルを提案している。

 少し抽象的なので例を示そう。図1は、社内工場で生産した製造物を作業現場に輸送し、そこで施工を行うことを特徴とする製造業の事例である。この企業の問題は、施工が全国の遠隔地で行われるため工事の進捗を本社から直接見ることができず、必要な部材をタイムリーに供給できないことだ。そこで生まれた改革コンセプトは、工事監督者が、携帯電話上で動作するアプリケーションに工事進捗を入力すると、工事計画と部品表に基づき、必要な部材がタイムリーに工事現場に配送されるという仕組みである。

 この仕組みの直接的な効果に加えて、本社では全国で実施されている工事の進捗を集中管理でき、現場で発生する問題をいち早く察知して対策を打てるようになるという効果もある。しかも、そこには在庫管理や原価管理観点等も含まれており、経営管理的な効果も発揮する、というコンセプトなのである。

図1●改革コンセプトの例
図1●改革コンセプトの例
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