一方、Wistron社と並んで名前の挙がっているCompal Communications社は、携帯電話の受託生産を専門に手がけてきた業者だ。フィンランドNokia社のWindowsスマホ「Lumia」シリーズや、ソニーモバイルコミュニケーションズのスマホ「Xperia L」の生産を手がけているものと見られている。

 2012年には2機種のLumiaを発注したNokia社が、同年第4四半期以降に投入したLumiaシリーズ5機種では一転、全てを内製に切り替えた影響などで、2013年上半期は業績が停滞した。ただ、台湾の金融情報サイト『理財網』(2013年8月26日付)によると、2013年は受注の7割が下半期に集中しており、とりわけ9~10月にかけては、中国江蘇省南京にある月産150万台の工場がフル稼働でソニーとNokia社の生産に対応する見込みだという。

 『経済日報』(同年7月18日付)によると、Goldman Sachs台湾のアナリスト厳柏宇氏は、2013年7月に発表したレポートでCompal Communications社がApple社の供給業者入りする可能性を検討している。それによると、携帯電話の生産で豊富な経験を持つことや、南京に、周囲から隔絶され機密保持に最適な遊休工場を持つことが、Apple社が供給業者に求める条件に合致しており、Wistron社よりも先に受注する公算が高いという。この他、台湾の経済紙『工商時報』(2013年8月8日付)も、Compal Communications社が、7.9型タブレットPC「iPad mini」とiPhoneの供給業者入りに成功したとの観測がこの夏、台湾市場で強まったと伝えている。

 2013年9月2日の台湾市場では、Wistron社がタブレットPC「iPad」の生産を受注し、2014年下半期から出荷するとの情報が流れた。さらに2日後の同月4日には『工商時報』が市場関係者の話として、Apple社のノートパソコン「MacBook」シリーズの生産をほぼ独占する台湾Quanta Computer社(広達電脳)と、携帯音楽プレーヤー「iPod」を生産する台湾Inventec社(英業達)が、Apple社が開発中と言われるウェアラブル端末「iWatch」の受注を分け合うと報道。Apple社の2014年以降の製品を巡り、受託生産業者間の受注争いが活発化していることをうかがわせている。