米国時間の2013年9月10日午前10時、米Apple社が新製品の発表会をカリフォルニア州クパティーノ市の同社本社で開催する。Apple社は同日発表する製品名を明かしていないものの、「iPhone 5S」と称するスマートフォンの次世代旗艦モデルの他、「iPhone 5C」という名になるとのうわさの、価格を抑えた廉価版を同時に披露するのは確実との見方がもっぱらだ。

 この発表会の開催が判明した翌日(同年9月4日)、Apple社が中国の主要メディアにも招待状を送り、米国での発表会から9時間後の11日午前10時(中国時間)、北京でも発表会を開催することが分かった。Apple社が価格を抑えたiPhone 5Cの投入を決めたのは中国市場を多分に意識してのことだと言われていることもあり、中国メディアでは9月5日、「iPhone 5CのCはChinaのCだった!」「米国ではiPhone 5Sのみ発表され、5Cは北京でお披露目される」「Apple社のティム・クック最高経営責任者(CEO)は、北京での発表会に出るため、米国のは欠席する」とさまざまな観測が飛び交った。さらに5日付中国メディアによると、電気通信キャリアの中国China Telecom社は同日、自社の短文投稿サイトに、同社がiPhone 5Sと5Cの予約受け付けを即日開始すると投稿、数時間後に慌てて削除するという、とんだフライングもあった。Apple社は現行機種のiPhone 5まで、発売第1陣の米国や日本から数カ月遅れで中国での発売を開始しており、これが中国の消費者から「Appleは中国を軽視している」との反発を招く一因にもなっていた。今回は、やはり9月11日に発表会が開かれる東京、ベルリンと共に、中国が発売第1陣の仲間入りするのは確実なようである。

 さて、iPhoneシリーズの生産については、Apple社が行っているわけではなく、EMS(電子機器受託生産サービス)企業の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕と台湾Pegatron社(和碩)の2社に委託しているということは、このコラムで何度も紹介してきた。iPhone 5Sと5Cについてもこの両社が手がけているようだが、iPhoneの供給チェーンが集積する台湾や中国の市場や業界では、早くも2014年に発表されるモデルの生産についての話題が増え始めている。今のところ、フォックスコン、Pegatron社の2社体制から、少なくとも3社、多ければ4社での生産体制になると見方が有力になりつつある。