現在、IFA2013の取材でドイツのベルリンに滞在しています。海外出張のときに時間の余裕があると必ず足を運ぶのが家電量販店。趣味と実益(仕事)を兼ねた「現地観光」です。今回もIFAの開催まで1日の余裕があったので、現地の大手量販店であるSaturnとMedia Marktに行ってみました。

 両店舗を周って印象的だったのが、韓国Samsung Electronics社の製品の多さです。薄型テレビやスマートフォンの売り場は同社と韓国LG Electronics社の製品が占拠しているのは予想通りでしたが、白物家電でもSumsung社の製品が多く目についたのは意外でした。Siemens社やRobert Bosch社、Miele社といった現地大手の製品を押しのけて、Samsung社の洗濯機や冷蔵庫、ロボット型掃除機などが目立つ場所に展示されていたのです。特にSaturnでは、Samsung社の製品を集めた展示スペースが白物家電売り場の大きな一角を占めていました。

 日本では、Samsung社といえば薄型テレビやスマートフォンといったデジタル機器のイメージが強いですが、世界では白物家電の市場でも一定のシェアを持っています。そのことをある程度は知っていましたが、同社が欧州市場にここまで攻勢をかけているとは思いませんでした。売り場の店員に話を聞くと「販売数量はまだ現地の大手メーカーに及ばないものの、テレビやスマートフォンで培ったブランド力によって着実に売り上げを伸ばしている」とのこと。Samsung社のテレビやスマートフォンに慣れ親しんだ若い世代を中心に購入者が増えているそうです。

 白物家電は一般的に、地域特性が非常に強い商品です。つまり、それぞれの地域の人たちの生活習慣に沿うものでなければ売れません。したがって多くの地域では、地場のメーカーが大きなシェアを持っています。特に欧州はSiemens社やBosch社、Miele社の他、オランダRoyal Philips社やスウェーデンElectrolux社などの強豪がひしめく成熟市場です。しかし家電量販店の売り場を見る限り、Samsung社がこれら強豪の牙城を打ち崩すだけの勢いがあると感じました。

 一方、日本メーカーの白物家電はどうか。SaturnやMedia Marktの白物家電売り場には、パナソニックの製品がいくつかある程度でSamsung社ほどの存在感はありませんでした。パナソニックは2012年に欧州市場に本格参入し、欧州の人たちの生活習慣に沿う製品を展開することでシェア拡大を目指しています。日本の白物家電の技術を欧州で知らしめるためにも、同社の奮起に強く期待しています。

 日経エレクトロニクスの9月30日号では、Samsung社やパナソニックなどがIFA2013で発表する家電製品の技術を解説記事として報告する予定です。薄型テレビやパソコンなどの需要が伸び悩んでいることもあって、今年のIFAは白物家電に関する発表も多くあるようです。ご興味を抱かれた方は、ぜひご一読いただければ幸いです。