補助金、税免除はドーピング?

 長年にわたってクルマの電動化を見続けてきた狩集デスクです。ランキングの17位に入ったコラム「EVやPHEVって案外に売れていると思いませんか」。この記事では「売れ行きが悪いという報道が多いけど、よくよく見るとそれなりに売れていますよね」と、問題を提起しています。ジャーナリストらしく「ちょっと、冷静になってみましょうよ」ということでしょうか。

 狩集デスクは、各社が投入したEVやPHEVの実際の販売実績を上げ、製品が出始めたばかりとしては想定以上に売れていると印象を語っています。HEVのプリウスも初代は5年間で12万3000台ほど。ブレークしたのは2台目からだったと歴史をひも解きながら。

 これについても、「批判」と「応援」の両方の意見があるようです。

 「補助金、税免除の形で、過去、現在に至るまで一体いくらつぎ込まれたか。これが触媒なのか、持続性のないドーピング薬なのか。ビジネス出版なら分析があって然るべき

 「『太陽光で発電し充電する。PHEVを所有し自分の家で充電する』。このような新しい生活スタイルを提案している“スマートハウス”が富裕層に結構売れている。こんな生活スタイルが実現できる人がPHEVを買っているなら、今の販売台数も納得できるし、PHEVが今後のクルマ生活の本命になる可能性を感じられる

 確かに「補助」がドーピングなのか、触媒なのか。この判断は、今後の技術戦略の成否に大きく関わってきます。初代は、最初の割にはそこそこ売れている。だとすれば、次はどうなるか。「そこそこ」が、そのまま尻すぼみになっていくケースも少なからずあるわけで。

 今回ランク外ではありましたが、『日経Automotive Technology』の清水記者によるコラム「FCVをあきらめない」も読者コメントで盛り上がっています。燃料電池車(FCV)は、EVやPHEVと並んで興味が集まっている分野。読者の意見は熱い。

 「原発を停止したまま主に火力発電で電力を賄いつつPHEVを何十年と継続させるのか、初期投資に多額の費用を掛けてFCVの普及を目指すのか、ごく一部分の費用についてだけ勘定されても残念ながら説得力を感じません。数通りのシナリオと、各シナリオで掛かる全費用を試算するところから始めないと初期費用だけに目を奪われているようでは失われた数十年と大差ない気がします。結局、新しい技術、分野に踏み出せないままジリ貧状態に陥っている現状のように

 サイトマスターの立場を利用して、ちょっと優等生ぶった発言をすれば、多くの意見がある分野はやはり面白い。取材に出掛けても、技術者の皆さんの目の輝きが違います。クルマは100年来の技術が切り替わる節目にある。そして、変革を担う技術候補とシナリオも多い。Tech-On!は、その熱さを受け止められるメディアでありたい。本当にそう思うのです。